それがお前らの「提案」かぁ〜!?

今回もSESの会社さんとのお付き合いで感じたことです。
当時、開発基盤と言って良いような製品に携わっており、そのチャネル(販売代理店)開発で沢山のIT会社に伺っていました。パッケージなどを扱うところは、中々、話が前に進まないのですが、SESの会社さんは話が早いところが多く「じゃ、今度、お客さんのアポとりますね」と言われたり「社内説明会をお願いします」と前向きな反応をしてもらえました。が、大抵はすぐに話が止まるんですね。と言うのも彼らが求めてくるのは「適用事例」なのです。正直、これ外資の多くは「掴み」に使うものだと思っています。だって、導入にベンダーが深く入り込む事が少ないですし、導入過程の話はお客様の機微情報ですからね。その前提をつけて資料の提示や説明をしても「実際の工数は?」「工数の削減率は?」と聞いてくるんですね。正直(シラネェよ)とも思いますが、こちらからの回答は「通常、御社で類似の案件見積をすると、どれくらい掛かりますか?もし必要なら評価版を提示しますから、それを使って工数比較されては如何でしょうか?」となります。まぁ、これ質問への「すかし」みたいに見られるかもしれませんが、本当にこのくらいしか彼らが求める定量評価の試算ができないのです。場合によっては「NYのお客様にチャネルを作って頂きますから、必要ならお申し付けください。現地担当者が案内いたします」と言うこともあります(英語の壁で99.999%「い、いや、そこまでは…ねぇ(汗)」と言う反応でFinです)。
で「すかし」では無い理由ですが、まず、評価版の手配が必要です。私の勤め先ですとライセンス発行のための契約が必要です、その前提でNDAの締結から始まることもあります。で、ライセンスが発行されたらインストール。で、インストールの最中に、予めお願いしていたDBやミドルウェアの調達ができていないことや、時にはサーバーがないことが判明します(マジです)。
そして、次にトレーニングや説明会で使い方などを簡単に(一週間かけて習ったことを、「掻い摘み*100」の勢いで脳内編集して一日)レクチャーして、使い方が判らないとか、なんかコケたとかって質問にお答えする。なんて事を、時には一人でやらないとならんのです。ね「すかし」てる訳ではないんです。IT会社さんが求める数値を求めるために、かなり真摯な提案をしているんですよ(笑)。

で、この手順の通りに進んでいけば、まだ良いのです。が、大抵はインストールが完了する前に止まりますね。準備ができないんです。時に「動くPCサーバ貸してよ」とか言われることもありますが、今どき、他社のサーバーを滞りなく社内に持ち込んで、ネットワーク接続や普段使っているPCとつなぐなんて事ができるはずがありません。「貴社のセキュリティ管理者とご相談いただいて、必要書類を頂いてからの調整で良いですか?」で話が止まります。

更に、先に進んだとします。99%、定量評価は出せていませんが、お客様に持って行くんだとかって話しができていたりします。あ、逆ですね。事のおこりは、大抵「○○社へ提案したい」というのが多いパターンです。でIT会社さんは自社紹介資料だけを携え、こちらは印刷した説明資料とデモ機に説明資料を抱えて訪問します。が、99.9%討ち死にします。そのキーワードは「で、製品は判ったけど、これをどう使えと?」です。大抵のお客様は課題に対するソリューションがほしいのですね。そこに嵌れば、遅いDBでも高価なサーバーでも売れると思います。が、形のない開発基盤で何をしろと言われても、日本のIT文化では先の無い話しか出来ません。IT部門に持っていったとこで、彼らのスタッフがプログラミングをしているケースは少なく、多数はSIerが担っているのですから、そちらが使えるかどうかがポイントになるのです。以前にも書いたとおり、開発効率化が決してIT会社に歓迎されるソリューションにはならいのですから…。

でも、これはまだ良いほうかも知れません。一度、開発基盤をお客様に紹介したいといわれた事がありました。この頃、既にその会社を離れた身としては、正直「どうでも良い話」ですし、話を振られても手の出しようが無いのです。が、現状の会社にコンタクトを上手く取れないからと、紹介されたのです。そこで信じられない言葉を聞いてSES会社の病理みたいなものを感じてしまいました。それは「開発基盤を提案したいんですよ」です。想定は事業会社で、規模はそれほど大きくない。頭の中で簡単に想定図を書きましたが、そこに開発基盤で喜ばれるストーリーを置く場所はありませんし、簡単な想定回答を用意しておきながら、簡単な質問をしてみました。「で、どう提案したいんですか?と言うか、どういうペインがあるんですか?」と。で回答は想定外の低レベル「いや、それを聞きたいんですよね」。つまりドアノッカーにしたいと…。それも、開発基盤でと…。ありえないのです。先ほど書いた「で、どう使えと?」と言われるんです(笑)。その時の顔を見たいなぁと思いつつ、自分の趣味の悪さをポケットにしまっておくことにしました。

提案という言葉が多重下請で下位に回るほど軽くなっているようです。本来、これで「ご購入を検討していいただけませんか?」が提案だと思うのです。ところがGoogleがネット購買で「提案」するようなレベルにも達していない。そんなもので提案を受け止めるようなお客様に私は会ったことがありません。