じょ、ジョブデスクリプションって…(笑)

私自身がSESの会社にいた頃の話です。ご他聞に漏れず「新規事業を立ち上げたい」と言うお誘いで入社しました。その会社としては珍しい海外製品の一時代理店としてのビジネスでしたし、中々、苦労の連続でした。
ただ当初から「導入工程はベンダー側か別途PMを立てろ」と言うことはお約束になっていたのですね。そして約半年、端から見ればトントン拍子に、中の人としては学習・調整・顧客対応にベンダーの大失態へのリカバリーと、ほぼ休み無く働きづめの状況でした。そんな中で「人を追加するか?」と上司に言われ、何人か社内面談もしたのですが、全員、口をそろえて「英語は無理」と言う常態。プレゼンだけでもと思い、その中でも一人だけ2次面談で経験をプレゼンでアピールしてもらいましたが…いわゆるスキルシートは美しいのに、自分の経験を説明したりQ&Aをしてもらうと、中身が一切わからないのですね。業務経験としては、正直アウトでした(それもあって、以前「新規事業を余剰人員対策にするな」)と書いたわけです。

さて、そのトントン拍子の状況からPM要員を外に求めることになったのです。人事にも「念のため」で募集が掛かったら即対応するように根回しもして、上司が依頼申請をすればOKな段取りになっていました。が…。音沙汰がない。いや、何人かレジュメは来たのですが、誰も特技や経験に「英語」が無いのです。抱えている製品を考えれば、私のレポートを見ていれば、英語が必須、その他の技術的要素も判ろうはずですが。で、人事にコソッと聞いたのですね。どんな募集要項になっているかを。そうしたら「PM経験者で伺っています」と…。
少し種明かしの前に、ここまでの顛末をまとめてみましょう。
1) 案件先が契約を前提に導入スケジュールを求めてきた
2) 案件先が従来考えていた導入時期を踏まえ、早期にプロジェクトを立ち上げ導入の完了が必要
3) ベンダーには日本語ができる技術リソースがないので、自社リソースが必要
4) 早期にジョブディスクリプションを纏め、人事に中途採用を依頼してほしい
と言うのが上司へ打ったメール(朧な記憶から再現)です。

で、これを送信した直後に上司に「中途採用の依頼をメールでしています。ジョブディスクリプションを書く時間がちょっと無いのですが…」といったら「こちらで書けるよ。書いたらレビューして貰えるかな(にっこり)」と上司の優しい即答で安心していたのですね。ところがレビューなど関係なしにレジュメが来ると言う怪奇現象が起き、しかもテキセイニギモン!と言う方々ばかり。そこで怪奇現象の謎を解くべ
To 人事「もしかして、この前の事前相談で採用フェーズに入ってますか?」
From 人事「いえ。そちらの上司さんからの依頼で動いています」
To 人事「あひゃ。じゃ、ジョブディスクリプションや採用要件とかは…?」
From 人事「詳細は来ていませんが、PM経験者と言うことで動いています」

そうなんです。SESの下請に熟達した上司様にはジョブディスクリプションがどうやら理解できておらず、かと言って「急募」の状況から、こちらに振りなおしも(たぶん、恥ずかしくて)できず、エイッヤッで人事部に申請しちゃったようなんです。
で、この期間だけで2ヶ月を棒に振り、結果、私がPMをやったんですが…詳細は以下略で(笑)

ここからのLessons & Learnedです。
まずジョブディスクリプション(業務記述書)ですが、欧米の企業が人材募集をする際には必ず公開される情報です。あちらでは特定の業務に即応できる人材を採用するという感覚なのでしょう。ターゲットの
・学歴、学位
・居住地
・出張の有無
・必要な(自然)言語とレベル
・想定する業務経験
・想定する技術経験
などが書かれており、それぞれに「必要」「好ましい」とランクが置かれています。
そう、一般的に面接などで聞く内容です。が、それが書けない…。
下請SESのビジネスなら定型フォームに技術要素・業務要素を書いてもらえばOKなわけです。逆に提示されるものも、そんな感じでアピールがどうのこうのなんて関係ないのでしょうね。

ただ、当然、こんな感じで募集をしても適切な人材採用には結びつきません。先ほども書いたように、英語が必要なのに「無経験」(未経験ではない)とか、プレゼンやトレーナー業務は苦手、顧客との折衝の経験なし、予算やスケジュール管理のポイントにも見当違いの答えしか返ってこないなど「PMって…なんだ?」と言う疑問符にKO直前にされていましたし、他の業務やプロジェクトを見ていても、似たような状況に見舞われていたのですね。つまり私の上司様だけがスカポンタンだったわけではなく、人事へ採用申請を出せる役割(部長以上)にスカポンタンが集まっていたわけです。

もう少し書きます。
恐らく日本の会社でも呼び方は違えども採用要綱やジョブディスクリプションの作成が必要ですね。いずれにせよ目安でしかないのですが、それでも募集社は何をやって欲しいのか、それに必要と思うスキルやスキルレベルは何かを伝え、逆に応募者側は自分の何がヒットするかを探すのです。これ転職を重ねた身としては、個人情報を晒す唯一の拠り所なのですね。
ところが応募者にしても、募集社にしてもいい加減にしてしまうことがありますね。いずれにしても背に腹は代えられない状況だからかも知れませんが、寧ろお互いの不幸の元になってしまいます。特に募集社は「人財」と言うくらいにアピールしたいなら、せめて何をやって欲しいのかを書きなさい!