コンサルテーションとは

下請を主としたSES会社のWebサイトや提案書などを拝見すると「豊富なコンサルテーション実績」を謳いあげていることが多いように思います。
これまで書いてきた「重層的請負構造」を考えると、本来の工程の中でSES会社がコンサルテーションを実施することは少ないと思うのですが…。

まず、コンサルテーションについて考えて見ましょう。
【コンサルテーション】相談。協議。専門家の診断や鑑定を受けること。
デジタル大辞泉)の解説 とあります。この理解で言えば、コンサルテーションが実施されるタイミングは常時発生していますし、そこで専門家として何らかの診断や提言を行う事は可能です。但し、一般にコンサルテーションは開発やシステム提案の上流工程に位置する「作業」として考えられています。また、その継続でコンサルタントとして工程を管理するものがコンサルテーション会社が提供するPMOとして理解されています。

では、SES会社が提供するコンサルテーションとは何でしょうか?
正直、私には理解ができていません。
理由は簡単で、彼らが好きな「工数」の中にコンサルテーションを意味する言葉がほぼ皆無だからです。全くでは無いのですが、その工数が提案内容を構成する他社製品の導入に対する作業で、内実は開発ベンダーが担当として積み上げられた工数になっているのですね。つまりSES会社の工数として「コンサルテーション」は実質「ゼロ」となっている事が多いのです。
ここを突っ込むと「ベンダーとしては豊富」だとか「別案件ではコンサルテーションをやっていた」とか、色々な言い訳が上がってくるのですが…。更に言えば、そういった会社でも若手をコンサルテーション会社に要員提供し、離任後は自社のコンサルテーション業務に就かせることもあるのです。が、こういった人が実質担う業務は
・出向いたコンサルテーション会社で求められた場合の対象要員
・コンサルテーション会社が企画・提案した開発案件のブリッジ、PMO要員
が主要な担当。そうですね、多層的請負の構造をコンサルテーションの業務に割り当てただけとなっているのですね。
悲しいかな、これを「箔」として、ブランド力のあるコンサルテーション会社へ転職する方も少なくないのが実情で、結果としてSES会社がコンサルテーション会社と同様の機能を独自に発揮することは、従来の枠組みの中では可能性「ゼロ」といわざるを得ません。

ただ、最初から可能性「ゼロ」と思って、経営者の方々がこのような業務を立ち上げようとしていない事は理解しています。まず、重層的請負構造の中では、工程及び商流の上流にいることが利益率を上げる近道に見えることです。事実は、恐らく従業員の平均給与を比較するだけでも明らかになると主のです。プライムでの取引関係の多さが給与と比例関係にあるはずです。もしかしたら、この関係性は製造業よりも激しく現れるかもしれません。また工程の上流を担いたいと思えば、自ずからプライムベンダーとなる必要があり、コンサルテーションからのRPFや顧客との直接取引を引き受けられる関係性が求められるわけです。
当たり前のように、一般的な下請SES会社でプライムベンダーと同等のお付き合いがお客様と成立している状況は珍しい訳です。するとコンサルテーションの実績には「?」をつけておく必要がありそうです。

少し見方を変えてみましょう。ビジネスで大手、中堅、そしてブティック型と呼ばれるような個人経営レベルまでの様々な専業コンサルテーションの方と御一緒したことがあります。またベンダーやIT企業でコンサルタントの肩書きをつけた方も沢山存じ上げています。当然、社風もですが、彼らの個々のキャラクタや仕事のやり方は、特にお客様との関係性が密な人ほど個性的な印象ですね。これが下請系から見ると「偉そう」と言う一言で片付けられます。実は私も同意するような個性の方も沢山お会いしてきました。ただ、これは…寧ろドロップアウトしそうな人に見られるのですね。と言うのも、一定のクラスタリングが出来てしまうからです。
1. 技術用語、特に英語のものを振り回す
2. 契約関係(委任・請負)の区別無く、請負前提で責任関係を定義する
3. 自身が作る成果物が「定義」となっていない
これがザックリとしたクラスタリングの結果です。
このようなコンサルタントが「偉そう」で片付けられることは…、いやコンサルタントに限らず自然な事だと思います。が、冒頭にも書いたように
コンサルテーションと言う「取り組み」は、随所で発生しますし、専門性をもったエンジニアなら何らかの形で取り組みに参画できると思うのです。しかし下請に限らずSES会社の自己矛盾は、コンサルテーションを謳い文句にしながら、その定義ができていないのです。つまり自分たちが「偉そう」で片付けたコンサルタントと同様、用語は使い、契約関係の中では曖昧に置き去りにして、コンサルテーションとしての定義は全くないのですね。

誰も突っ込んでいるところを見たことはありませんが、馬鹿な私にはとても不思議に思えるのです。