日本語ができない代理店ビジネス

先日、某社が代理店をしている海外製品のWebサイトが改訂されていたので参考として拝読しておりました。
UI的には従来よりも近代的(笑)になっていたのですが、なぜか言葉が入ってこないのです。一応、紹介されていたソリューションには知見もあり、寧ろ…、と思い、知見の無い方に紹介して印象を聞いてみました。返事は「わかり易いよ!」です。思ったとおりの返事だったので「何がわかり易かったか、教えてもらえますか?」と重ねて質問してみます。すると「いや、絵も多いし、内容が細かく書かれていて良かった」。(はい、想像通りでした)。

インプレッションはWebサイトで大切な構成要素ですね。ただ、ソリューション紹介をしようとすれば、コンテンツは文字情報を含みます。その文字情報が良くないのです。実例を提示しつつ添削式に説明できれば…わかり易いのでしょうが。スミマセン。

これは海外製品慣れの問題なのでしょうが…。英語が日本語になっただけの資料。と言う印象が強い文章だからなんですね。
「正確な日本語訳に文句つけるな!」と言われそうですが、恐らく、外資でプリセールスやマーケティングを長くやられている方、それもコンテンツに対するレギュレーションに一定の改訂自由度を与えられている方なら「訳文は不要」と仰るのではないでしょうか?
正直、自分が本社やベンダーから貰ったプレゼンを、そのまま使うような事は、痛い目を何度か見てからは皆無です。まぁこれも失敗体験でしょう。痛い目、つまり「それさ、わかんない」と言う言葉を婉曲に表現されてからですね。例え日本語で書かれたものでも、一旦、自分の言葉で書き直したり、あるいは内容を確認していかなければ全く使えません。
こんな経験をしたことはありませんか?プレゼンテータが、画面に書かれた言葉だけを話して終わるというプレゼン。私は、アレが苦手なのです。見るのも、そしてやることも。文字を読み上げる事が目的なら、何も人を集める必要は無いはずなのです。SEさんに多い病理のような気すらしています。
同様に、資料が全く「噛み砕けていない」ケースも多いのですね。「生産性が向上しました」なんて売り口上を威勢よく話しても、定番の突っ込み「その根拠は?」に耐えられない。「いや、貰った資料ですから」とか「触ったらダメだと思いました」と言うのですが…。
決してプレゼンが得意ではないのですが「プレゼンなんて会話のトリガーじゃん」と割り切ってしまう私は、貰ったパワーポイントファイルを時間が許す限りいじり倒します。元が英文なら固有名詞を除いて、カタカナとアルファベットを一切残さない覚悟でいじります。それでも「お客様を英雄にするために生を受けた、世界最高水準の先進的な製品」とか(適当な例でごめんなさい)、まぁ「日本で、そんな表現しないから」と言うものも駆逐します。

こういった表現は聞く側に痛くも無い腹を探られると言うか、結局は無益な突込みを受け続けて終始するか、「日本語で説明してくれないか?」と言う冷たい言葉で終了するのです。

確かにテクニックとして、英語の表現やカタカナ言葉を使うこともあります。ただ、それは半ば意識して
・会話の中で充分に通用する
・少し海外製品だと認識させる
・テキトーにごまかす
の何れかの場合に限定すべきでしょうし、テキトーに誤魔化したい場合には予め、突っ込みに対する防御方法を考えておく必要があります。

海外製品慣れをしてくると、経験からこの様な対応が自然に出来るようになってきます。時には「あ、良かった。やっと日本語で説明してもらえた」と競合優位性になることもあるのです。しかし、その為に必要なのは、実は日本語の能力だと思っています。
「お前の日本語は、酷いな」と言われるのは覚悟の上ですが(笑)。
つまり、書きなれていない、説明しなれていないのと同じなのですね。これは外人がプレゼン準備をしている時に気づいたのですが、彼らは
・参加者数
・参加者の職位(最高レベル)
・参加者の担当業務
を気にします。それが判ると、パワーポイントの構成変更をするのです。時間があれば、こちらからのリクエストでページの追加もしながら、全体として特に、最高位の参加者が訴求点を理解できるように構成するのですね。

同席や参加をしてモヤモヤするのが常時同じパワーポイントを使い続ける人です。非常に話しなれているので、ページ送りのタイミングや呼吸の入れ方など、とてもスムースに進みます。が、スムースに進んで何も質問が出ない、あるいは説明後のQ&Aで藪から棒の質問にのた打ち回る。など、あまり良い参考にはなりませんでしたし、お客様も結果として「んで?何を説明したかったの?」で終わってしまうのです。色々な意味でもったいないのです。これは、参加者として一回だけ聞くような場合でも「あ、この人、毎度、このパワーポイントなんだろうな」と想像できてしまうので、要注意です。
もっと悪い例です。同僚だった中国人が謎の経路で入手したプレゼンを引き合い先にお披露目したときの事です。プレゼンはカスタマイズなどの柔軟性を説明することを主目的にしていたのですが、「自動車」や「家」の写真だけのスライドが何ページか出てきたのです。彼としては入手したまま日本語にした方が良いと判断したようですが、写真のスライドには何の説明も無く、お客様からの半ば突っ込みのような質問に「謎です」とコメントし彼を除く同僚の間では「謎プレゼン」として伝説になってしまいました。
(本当は、「買ったままで使うのも良いけど、自分が使いやすいように改造するのが当たり前でしょ。車だって、家だって」と言う意味なのです)。端から見ると、完全に笑い話ですが、実際には商機の逸失ですし、プレゼンをやるときには相手が判っていなければなりません。表層的に日本語にしただけでは判らないのですね。

少なくとも、まだしばらくの間、このblogを呼んで頂いている皆様にとっての「聴衆」は日本人で日本語がネイティブな方々です。言語は共通です。しかし、経験や責任、得意・不得意があるのです。その違いを意識しながらプレゼンをやってみる、あるいは資料を作ってみると、たぶん、滑らないで済むと思います。