話せるだけで「英語できます」って、あり得ないんですけど

皆さんは英語、できますか?

外資にいると当たり前のように英語ができるものだと思われるのですが…実態とは違いますね。必死になって英文をGoogle翻訳に突っ込んで理解しようとする人もいますし、流暢に話す人もいます。そして「俺、できない」と捨て鉢になっているような人も中にはいます。
ただ日本人の「できない」は余り信用していません。ま、それは置いておきましょう。

以前、人の採用で苦労したのが「英語」です。履歴書や経歴書でTOEICのスコアや英語を使った業務などを華々しく書いている方は多いのですが、実際に話してみると「からっきし」と言うレベルで終わることが少なくありません。読み書きだけなら、GoogleなどのWebアプリで何とかなると思い込んでいても「それ、機密性の高いドキュメントだからGoogleとか禁止ね」と言った瞬間にお手上げになる人もいます。単語だけ検索すれば何とかなると思うのですが…どうもね。

IT屋のはしくれで見ていると「よく英語を使わずに偉そうに言うよな」と言う場面が少なからずあります。やはりOSからアプリケーションまで英語圏を母国としている製品が多く、また事例などを求めに行くと、どうしてもGoogleでも検索対象を英語にしないと欲しい情報が出てきません。また、外資に勤めていると、最新の情報を持っている本社や各国の同僚と会話しないと何も最新情報が出てこないのです。そして、こういった日頃のコミュニケーションが、実際に会ったときには更に親密になる大切な要素になるのです。言葉は大切です。

で、そんな私が見た最悪なケースを書いておきましょう。
あるSES系の会社さんが代理店として提示した「要望」を本社にエスカレーションしたときの事です。本気度が高く、こちらでも重要性が高いと思った要望ほど本社との会話には代理店さんも参加してもらうことにしています。その時の言語は「英語」になります。その際、窓口担当のマネージャーさんと日時や参加者の調整をしたのです。内容は技術的な課題の解消で、本社が対応したくないことは事前のやりとりで理解していました。そこで、マネージャーさんには参加必須、そしてマネージャーさんが英語に不安があると言う事で外国人の若いエンジニアさんにも通訳的に同席を頂くことにしたのです。ただ若いエンジニアさんは社会人経験ゼロ年。新人さんです。青すぎます。そこで「通訳として機能するか…心配なのですが、大丈夫なのですか?」とマネージャー氏に再三確認をしたのです。その返事は、毎回定型句で「英語も日本語も問題ないよ。日本語で書くのは不安かもだけど、話すだけだもんね」と一切取り合ってもらえませんでした。
そして電話会議です。こちらから状況の説明をし、本社サイドからはSES会社さんに課題の詳細について更に説明を求められます。すると外国人エンジニアさんが「物すごーーーーーーーーーーーーーーーく」ザックリと話して言葉が止まりました。彼は主題について理解していなかったのです。仕方なしに私から補足説明を「物すごーーーーーーーーーーーーーーーく」詳細に語らなければなりません。通訳として期待していたのに、マネージャーさんは何も語らず、エンジニアに丸投げだったのです。そして本社から「更に物すごーーーーーーーーーーーーーーーく」対応したくない理由を並べてきたのです。そこで私からやる必要があること、そして補足をマネージャーさんに振りました。するとマネージャーさんはエンジニアに「やらなきゃならん」といった意味のことを呟いて、エンジニアさんが英語にして「さっくりと」終わるのです。これでは交渉ごとが成り立つ雰囲気がぶち壊しです。すると本社サイドが「要望はそれほど強くないと理解したよ」と言い放ってきました。で、マネージャーさんは無言。そしてあろうことか、エンジニアさんが「ですね」と返事をしてしまいました。「不要」って意味です。耳を疑った私は「それで良いのですね?」と日本語で聞き直したのですが、これで要望は完全破壊された形です。
いや、私自身も梯子を外されたようなものですから、どうにも出来ません。

電話会議終了で、終了後にマネージャーさんにメールを送ることにしました。概略、こんな感じです。
お疲れ様でした。
通常、こちらから議事録の書き起こし等は行わないのですが、今回は気になる点があり備忘録として共有します。
本件について、私から重要性等は本社に伝えておりましたが、以下のやりとりから実現は困難となりました。
・かねてより、実現には時間等が必要なため困難な状況がある
・貴社からも直接は重要性や必要性について強いアピールがなかった
・本社から実現を諦めて欲しい旨の要請が貴社に宛て行われた
・貴社より要請について同意するとの返答があった
以前より、重要とのキーワードを伺っており、最終アピールの段階と伝えていた電話会議にて、上記のやりとりとなりましたので、貴社でのお考えと私の理解に齟齬があったのかとも考えております。

すると即レスでマネージャー氏のメールが…
こちらこそ、お疲れ様でした。
実現の重要性は以前と変わりありません。
エンジニアからの意見が大筋を覆すというのは、理解に苦しみます。
引き続き、よろしくお願いします。

もし、この返信がリアルな手紙で送られてきたものだったら、きっと破り捨てていたと思いますが…PCのスクリーンを殴るわけにもいかず…。
事実だけを伝えることにしました。
・エンジニアは「通訳」として同席されているため、彼の発言はマネージャー氏の発言と同等として扱われる
・予め通訳者としてのリスクは当方から伝えており、承諾されていた
・要請を再議論するには、正規のレターをSES会社で作成することで可能かも知れないが確約はできない
と…。結果としてマネージャー氏から詫びのようなメールが来て、こちらでレターの原文を起こし、再打ち合わせをこちら主導で行うことで何とか決着にもって行きました。

ここで教訓です。
・議論やネゴは言語に関係なくスキルとして存在する
・英語ができると言うスキルと議論やネゴのスキルは別
・要望は他人に丸投げしない

ホント、この手の話は多いのです。
・会議終了間際の