使えない代理店

以前、外資IT会社の国内スタートアップを担っていた友人との会話で「ツカエナイSIer」と言うネタで盛り上がった事があります。
当時は今と比べて事業会社のIT部門が強く、外資の、しかもスタートアップが独力で参入することは殆ど不可能な状況でした。そのため、いわゆる「口座」を持っているSIerに担がれない限り、どうにも動けないと言う背景がありました。

ただ、彼も人脈はあり、幾つかの事業会社に直接アプローチもしていて、その度に「どこかの代理店を連れてきてくれたら、本格的に話をしよう」となっていたそうです。実際、既に大手1社が代理店として前向きな検討に入り、同じく大手1社が検討しそうだと言う事でした。ただ、2社ほど中堅のSIerに話をしているのだが、どちらも毎週「前と後を行ったりきたりしてるのよ」と言うのです。両社ともに窓口は立っているのですが、その窓口の方が仰る事がハッキリしないのだと。特に困っていたのが、ダイレクトにアプローチしている事業会社へ連れて行こうとしたら、いきなりSTOPが掛かり、事業会社との調整で微妙な空気を作ってしまったことでした。

どうやら、SIer内での検討の方向性、理解としては「概ね問題なし」と言う状況になっているのですが、具体的な話に突っ込むと組織や要員、工数などで強い揺り戻しが起きてしまっているようです。

この話を聞くと「ははぁーん、新規事業の壁ですよ」となるのです。

以前から書いていることと被りますが、SIerは絶対的に「新規事業」の種を欲しがります。彼ら自身が、収益(率)の上昇、引いては上場や株価の上昇を求め、最終的に企業としての将来性を考えたときにSESでは自ずと限界が早く来ることを知っているからです。
ところが、現実にはSEには100%の稼動を求め、またプライム契約をしたときの恐怖(リスク)アセスメントができません。提案から乗ることで、失注したときの「取り返し」が気になってしょうがない訳です。
そして、更に「取り返し」を気にしつつ「重厚なチーム」を作ろうとしてしまいます。スタートアップ側の布陣は、友人1人です。が、大手SIerで10人程度、中堅2社が5人程度のチームで動こうとしていると言うのです。そこでザックリ計算すると
総人員
 1 + 10 + 10 + 5 + 5 = 31
内、営業系
 1 + 1 + 1 + 1 + 1 = 5
内、SE
 0 + 9 + 9 + 4 + 4 = 26
です。SEだけを見ても、相当な要員を抱えることになるのですね。正直…私が経営なら、まだ海のものとも山のものとも言えない段階ですから、SEは2名ぐらいでスタートしたいところです。ところが個社で見ても遥かにオーバーしている。と言う事は、プロジェクトのスタートまでの期間が言わば「時限爆弾」になりかねないと思ったのです。大手は体力もありますし、それなりにプライムとしての提案など経験で時限爆弾を破裂させない仕組みを持っていそうですが、中堅となると危険です。その為に、揺り戻しが大きく出てきたのでしょう。

ただ、これはベンダー側が主導した結果、リスクなのかも知れませんが、もし案件化した場合、特に中堅では代理店側が引き起こすリスクが大きくなります。それが「プロジェクト審査」や「稟議」、「プロジェクト会議」などと言われる社内審査体制です。大抵、こう言うところでリスク判定を行い、然るべき対処を会社や部門として判断する訳ですが、ここが厄介を引き起こす事が少なくないのです。一つは「形骸化」です。取締役なども参加して内容の評価をするのですが、実態を把握する術を持たずに説明や売上、経費で判断になります。その際、「何かあったら、現場で対処してくれ」「色々意見が出たけど、それを踏まえてくれ」などが『結論』とされてしまうのです。中には「これ、プライムでやるの?」とあからさまに下請SESへの郷愁を露にすることもあるそうです。こうなると、そもそも「代理店として」って話はなくなるんですけど…。こう言ったブレを抑制するために、リスク要素などを明らかにして検討すべきなのですが…下請SESで培った伝統には、こう言った定量評価が含まれていないのでしょう。
私自身、中堅以下のSIerが案件をベンダーに案件を持ってくるケースで似たような経験がありました。「競合ベンダーの製品を使ったプロジェクトが既にスタートしているが、障害が多すぎて遅延が出始めている。どうにかならないか?」と。営業から見たら、
・契約締結⇒短期間!のはず!
・価格交渉⇒契約が人質になる!はず
・適用範囲⇒明確!なはず!
と「想定」はバラ色!!!なのですね。ところが、DNAが下請SESだったりすると
・契約交渉⇒お客様への製品置換の説明が付かず、泥沼化
・価格交渉⇒既にプロジェクト予算を使い込み、ゼロベースから交渉
・適用範囲⇒謎の「アジャイル」だとか、「準委任」で不明確箇所多し(ライセンス数が確定できない)
で、営業としても辛い状況になります。
更にプリセールスとして参画すると、マニュアルに書いてあることを、一々噛み砕いて説明したり、中にはサンプルコードと言う名の成果物を要求されたりするのです。プリセールスから見れば、「辛い」を越えて「代理店って…なに?こっちが代理してない?」って事態です。当然、こういう案件にぶつかると、他の案件など手が回らなくなります(外資の場合、インセンティブに直結します)。

新事業をお考えの中堅SES会社の方々には、
・リスクの定量
・小人数でのスタートアップ
・時限爆弾を抱えない案件成立
は最低限、考えて頂きたいものです。

そして、もう一つ。引合に出したのとは別の製品ベンダーさんとの会話を思い出しています。その製品はUI開発に特化した製品で、ソリューションを組み立てる中では中核にはならないレベルの軽量システムでした。やはり、中堅SES会社が代理店となったのですが、その時のベンダー側の苦労話に
1. ドアノッカー(顧客訪問などの理由付け)にしか使われない事が多い
2. 軽量な製品故、適用ケースを語る必要があるがSES会社には出来ていない
3. ベンダーが訪問に付き合わなくてはならない
4. 「で、うちの何処に使えば良い?」と言う顧客側からの質問に誰も答えられない
5. どうやら中堅SES会社では「使えない製品」と囁かれている
と言うのですね。いやぁ…真面目な話、多いんです。特に基盤やミドルウェアなど、アプリケーションを作るための製品となると「顔」が決まっていないのです。プリセールスの経験では、初回訪問前に想定(一応、サイトやIR情報なんか見ながらですよ!)で、「顔」を決めていくのです。それが外れていても、類似の課題をお客様から引き出す誘い水にもなりますから。ところが、それができない、「顔」が決まらないと…「使えないねぇ」で終了です。決して製品が悪いわけではなく、ドアノッカーに使うものを間違えているんですけどねぇ…。

事例への信仰心

事例に関する勘違い

さて外資のベンダーにいると必ず要求されるのが「事例」です。
確かに英語も含めれば、多くのベンダーが事例を公開していますが、実は、あれよりも細かい情報が各拠点に共有されているかというと疑問です。
ですから、「あの事例で必要だった工数は?」とか「金銭換算で幾らメリットが?」と聞かれても答えようがありません。
すると「そんな、カタログ並みの情報で事例とか言っちゃうの?」と言われるのですが、言っちゃうしか無いんです。
いや、寧ろカタログ並みの情報でとどめる必要があるんですね。但し、前置きとして「開示できる情報は可能な限り調べた上で、言っています。」だけは、主張します(笑)。

さて、なぜカタログ並みで済ませなきゃならないかというと、基本、事例の所有者はベンダーではなく「お客様」だからです。実際、自分が携わったお客様での情報なら知っています。が、それだって開示は出来ません。そう言うと「お客様の名前は秘匿で良いから」と言われるのですが、既にサイトで導入済み顧客としてロゴが貼ってある先と混同されたらエライことになりますから、丁重にお断りするようにしていました。(ただ、何も考えていないマネージャーさんや営業さんが何を語った…騙ったかまでは知りません)
実際、アメリカなどのベンダーが導入の実プロジェクト全体を運営することはありません。確かにプロフェッショナルサービスなどの要員が参画することはありますが、プロジェクト全体の工数…というか工数と言う概念が薄い。確かに課金はしてるのですから、彼らも何人日・何人月分の稼動だと計算することはできるでしょうが…そんなものは事例を纏めたマーケティング側やプロダクトマネージメント側では把握もしていません。
恐らく、きちんとしたベンダーなら、リファレンスサイトとして幾つかのお客様を紹介してくれると思います。もちろん、「ニューヨークの本社です」とか「イタリアの田舎にある本社で」とかって海外出張をお願いすることになりますが。(私の知っている範囲で、こういったカスタマービジットはお客様の自己負担になります)

ところが、こう言っても「事例が出せないなんて、それでどう売れと」と迫ってくるSIer代理店さんもいらっしゃいます。特に記憶に鮮明なのは、あるグローバル企業と言っていい会社さんでした。米国では既に共同で展開が進んでいて、日本で後追いかけのような形で展開する、担ぐという状況だったのです。また、事例として公開していた中には、その会社さんとの「コラボレーションです」とキチンと書いてあるものがあったのです。ところが、実際に伺うと「アメリカの事例。あれの詳細をだしてくれ」といきなり言われてしまいました。正直「あひゃ」と言う叫びが心の中で止まっていてくれたかが心配になるくらいのレベルで(笑)。「はい。本社に問い合わせます。が、恐らく御社で共有されていなければ、弊社でも共有は難しいかと思います」と答えたのです。すると「うちの会社は大きいから、誰に聞いていいのか判らない。貴社で調達してくれ」と…。再び「あひゃ」です。
「弊社で担当していた人間は特定できますが、恐らく、そこを経由して御社で御確認を頂いた方が得策と思います。こちらで社内開示として情報を得ても、御社、そしてお客様の同意が必要です」と…。
先ほども書いたとおり、事例はお客様のものです。カタログやサイトに書いた内容を越える情報を持っていても、こちらが気づかないのマル秘情報が含まれている可能性もあるのです。そして、「社内で聞くべき人間がいない」というのは、嘘・はったりの可能性もあります。つまり、三社で合意が取れなければ、そんなに詳細は出せないのですYO!!。というしかないのですね。

更に悪いのは(これは、こちらの対応も含めて)、口頭で伝えたことを更に詳しくって奴です。
これも外資にいた頃、本社からプロダクトマネージャーがやってきて、幾つかの代理店さんに訪問しました。で、プレゼンには記載していない、とある顧客の話をしていたのですね。その時に同席していなかった私に、営業から連絡が来ました「◎◎が導入中のX社の話をしたんだけど、文書にしてもらえる?」と。これは、一応、本社の◎◎に話はしました。が「ん?ダメ。だから言葉だけね」と(笑)。これを営業に伝えたら…、まぁ怒られた(なぜか)。どうやら、詳細事例として提示をコミットしちゃったんですねぇ…。そりゃダメだって(笑)。まぁ、中には会話をメモして、それをサイトに提示しようと企んだ方もいますが…。

 

更に話もあるんです。

外資にいると、ほぼ定期的に新製品や新機能が提供され、プレスリリースされます。で、これを説明しに既存のお客様や代理店さんに説明しに行くのもプリセールスのお仕事です。で、お客様なら「これで今まで残課題になっていた○○に適用できると思っています」とかって言うのを説明の結びにしてディスカッションに入るのが理想です。代理店さんだと「▲▲さんに説明したら、なにか出るかね?」的なフリが出てくるように誘導していきます。

お客様だと比較的、こちらの意図するような方向で話ができるのですが、代理店さんだと、こうならないことが少なくないのですね。で、代わりに出てくる質問が「で、これの事例は?」です…。新製品・新機能ですよ…。(笑)

SESの提案力

 

 【提案力】業種・業務の知識を元に、対象となるお客様の課題を解決する力
と理解していた私ですが、どうも下請中心のSES会社さんでは違うようですね。「単価が安いから、提案に持っていける」と言う話を何度か聞いた事がありますので、SEさんの月額単価が安い事が「提案力がある」となるようです。

 悪いことを書くようですが、こういった発言を聞くと「あなたの人件費が掛からなければ、もっと提案力が上がるんじゃないですか?」と思ってしまう私がいます。

 従前から書いているように、下請を中核としていらっしゃるSES会社さんでは、中々、若手のスキルが上がってこないことを懸念されているのですが、この発想がある限り、上がるはずがありません。既に悪循環に入っていると理解されるべきです。

 大昔、大手にいた頃ですが、顧客満足度調査や業界誌の調査で自社の提案に関する評価が低かった事を思い出します。実際、お客様と会話していても「うちも調査に答えたけど、実際、そう思われるよね」と言われていましたし。その提案と言う言葉が、どうしてこうなるのでしょう。
「下請発注に課題解決力なんて求めてないし、求められていもいない」というのが、実情なのでしょうね。

 ですから若手に「スキル」が付かなくても仕方ないのです。ここで言う「スキルはプログラムが早く書ける」、「ツールを使いこなせる」と言うスキルではありません。お客様の課題を理解するスキルを指します。これも従前から書いていた事ですが「コードに逃げる」や「技術的には可能」な事ばかりをやっていると、お客様への現実課題には対処できても、その背後にある「思想」にはタッチできないのです。いや、思想と言ってもルターやマルクスなどではなく、企業としてのIT戦略やバックグラウンドなど、表層的な課題解決へのソリューション策定の背景に位置するものです。

 例えば「疎結合」と言う言葉があります。恐らくWS、JSON,SOAPなどがピンと来るはずです。例えば、会計システムと組み合わせた勤怠アプリを作ろうと思えば、疎結合も密結合も関係なく実装する事ができます。以前、ベンダーにいた頃には「XMLのタグの分だけ、ネットワークへの負荷が上がりそうだから止める」と言う話を聞いた事があります。これは選択としてあっても良いと思います。が、「将来的に、貴方の会社の製品を使い続けるかも知れない。別の会社に移るかも知れない。基幹系も変更する可能性がある。だから貴方の会社で疎結合環境を実現しようと思う」と言われたこともあります。これも正しい判断だと思います。両者共に、「思想」があると思うからです。
 「じゃ、お前が言うSESのデメリットも、SES会社としては思想なんだから良いじゃないか」と言われるかも知れませんね。

先ほど書いた「思想」でも、疎結合に対して密結合のメリットは非常に小さいと思っています。特に外資にいた人間の感覚として、その会社が持つ製品…いや、会社そのものが無くなることもあり、その時に製品の中で自分が信じていた優位性が失われるかも。と言う体験を実際にしています。その事を考えると、密結合状態でシステム更新・入れ替えが困難な状況にしておくことは「一時的」には理解の出来ることですが、長い時間軸で考えるととてもリスクが高いと言わざるを得ないのです。このような例で考えれば、SES自体がコアになっている姿には「一時的」なメリット、軸としての有りようは理解できるのです。が、長い時間軸と、技術的な変化の中では、今の大量にあるSES会社とその従業員・要員を養っていけるだけの市場があるのか?業績を伸ばすだけのパイが用意されているのか?と言う疑問が残ります。

 それだけに、「思想」が必ずしも「正」とは限りません。思想に反したものを拒絶する免罪符とはならないと考えています。、
・全社的?部門?個人?
・永続的?一時的?
・堅固?脆弱?
と考えておかないと、売る側の立場で言えば、斬新であるほど、自社が持つ考え方・システムが提案できなくなってしまいます。また、買う側の立場では時流に伴う変化への対応が取れなくなってしまいます。変化に合わせる柔軟性を持つ事ができない時点で、思想を変革する必要があるのです。


「うちのお客さんに思想?無いと思うよ」と言われそうですね。実際、私もお客様と会話していて、こういった思想が現れない場面は幾つも経験しています。例えばBuzzワードの「ビッグデータを」とか「Fintechで」とかって言うお話を聞くこともあります。そこから先への考え方は出ない。担当している領域での課題などは御提示いただいても、具体的に自社で何を取り組むべきかを提示されない。裏打ちする戦略や思想があれば、「ビッグデータを使ったマーケティングを行いたい」とか「Fintechを応用した顧客管理をやりたい」と言う、より具体化した会話ができると思うのですが…。力不足でしょう。私のね。

ただ、私の経験上、こう言った話しかしない「キーパーソン」は事業会社、お客様との会話はレアケースです。事業会社の一員としては何も模索していないか、あるいは丸投げする事を考えていなければ、こんな状況で時間を潰している暇は無いのでしょう。
できるキーパーソンとの会話から提案が王道だと思うのです。人件費が提案だと思っている限り、この王道には乗らないのでしょう。

 

 

セキュリティ対策。過剰化していませんか?

業種によって、セキュリティ対策の方法などはバラツキがあるようです。特に個人情報を取り扱うECなどネットサービスの事業者にとって、個人情報の保護は至上命題になっています。
ただ、どの様な業種を見ても社内にはレベルに応じたアクセス権や基準が整えられており、細やかに対応していれば、基準に応じて利用可能なアプリケーションやWebサイト、更には持ち込み・持ち出し品規定などが決められています。

IT業界でも、この基準は概ね一致しています。特にお客様のシステム運用を自社オフィスからリモートで実施するような場合は、高い基準点を定めています。ただ、この運用などで見聞きする実態は、かなり「お寒い」状態だと思うのです。

例えば、通信アプリと言われるようなソフトの利用です。既に、企業が配布するスマホiPhoneMDMが設定され、基準に合わないアプリがインストールされないような仕組みがとられています。また、先ほども書いたようにPCへのインストールも制限が掛かっていますし、監視も行われています。が、自社が提案するような高機能のシステムが利用されているわけも無く、かなりチープな管理がまかり通っているようですね。
一般に、チープなものと言うと抜け穴が大きいように思われますが、実際には逆のケースも多いのです。つまり「壁」を作ってしまって融通が効かない場面が多く、先ほど書いたような通信アプリが「全てダメ」とされていたりします。

ところが、最近ではお客様側で(さすがにLINEを効いたことはありませんが)、そこそこ名の通った商用の通信・SNSでのコンタクトチャネルを要望されることも少なくありません。また、外国の企業と付き合うと、Facetime、あるいはSkypeでの会話も多いのです。ところが「ウチ、禁止なんですよ」と言われると…。羹に懲りて膾を吹くとも言いますが、羹を見ただけで逃げているような気すらしてしまいます。しかも理由が「何処かのお客さんからの要望みたいなんですよねぇ…。だから情シスに掛け合っても何も動かなくって」と既にチャレンジをしているとも聞くと…。LAN内でのアクセス権限やPC内の資産管理、あるいはスマホでのMDMで監視すれば、どうにでも成るんですが…。

ただ、実際には
 お客様から言われた⇒唯々諾々で合意
と言う経緯かと思うのです。
本来であれば、
 お客様から言われた⇒制限事項の検討⇒対象領域の明確化⇒合意
なのでしょうが…SES会社さんだと、一旦合意した内容を覆すようなネゴぢからは…みたいです。

口八町

SES企業の社員さんと会話していると、とても感心する事があります。いわゆる技術用語に強いのですね。会話をしていると業界用語とも言える技術用語が飛び交いますし、饒舌な方が多いのですね。ただ、お客様との打ち合わせになると、急に無口になってしまわれたり、会話がかみ合わないケースが少なくありません。

これは、外資にいたときにも少なからず経験してきたことなのです。特に教育などがキチンとしていたり、あるいはドキュメントを熟読していると一種の「洗脳」がおきます。そうすると一般用語化していない「自社用語」と「英語」で頭の中で製品情報が埋まってしまうのです。すると、お客様と会話していても「カタカナ禁止」だとか「英語は判らん」と言われて門前払い同然の扱いを受けます。

特にSESで開発をやっている方だと、お客様(事業会社のことです)も、技術畑の方が多く技術用語も受け入れられやすいのでしょうが…。

そして、時々感じるのは技術用語の「語彙数」が技術力のように思っている人が少なからずいることです。これは、別に開発エンジニアだけではなく営業職の方にも「業界用語」「専門用語」として相似形の症状が見られます。実際、お客様と会話するときには、その業界の語彙は必須ですよね。ただ、それが「土管」のように中身が無い事が少なくないんです。世に言う「御用聞き営業」って奴ですね。これと同じようにエンジニアの人たちが使う専門用語も、意味がないのですね。

昔、こんな事がありました。ベンダーとして、ある大手のSIerに製品説明を行っていたときにです。「製品内にオープンソースや3rd Party製品は使っていますか?」との質問を頂きました。今どき、ほとんどのソフトウェアが100%自社製品…スクラッチ開発しているなんてことはありません。当時の製品でも同じです。ですから「利用はしています。コマンドラインなどで立ち上げたときに露出するものもありますし、恐らく露出しないものもあります」と回答しました。すると待ち構えていたように「では、その製品一覧を提示してください」と…。
「んで、結果、どうしたの?」と聞かれれば(笑)。出しませんし、出せません。まず、そんなものを出した日には、こちとら社内でコンプラ違反に成りかねません。何故なら、どのマニュアルにも開示情報にも書かれていないのですから、もし知っていても本社の許可無く出すことなんてできるわけがないのです。
「じゃ、本社の確認取れば良いじゃん」と…(笑)。もし、そう言われても、そのSIerさんの為に断ったと思いますね。リエンジニアリングされるんじゃないかと言うのは、外資で案外、気にされるところです。この疑いを持たれると、質問を投げてきた社名を必ず聞かれます「それA社じゃないよな?」とか(笑)。すると、ビンゴでも「違う、B社ですよー。」と誤魔化さないとならなくなるんですねぇ。
で大抵、回答の代わりに逆質問を一度しないとならんのです。「で、そのリストが何の役に立つのですか?」と。まぁ、大抵は「セキュリティチェック」とかって仰る訳ですが、まぁ当時の時点でバックドアなんぞと言う語彙は一般化しておらず。まぁ「本社に確認しますね」として纏めると。
本当にそれでも必要なら、開発やマーケティングエスカレーションです。で、現地とダイレクトに会話してもらう事になります。通訳の手配もしますし、日程の調整もするんですが…。ただ、実際にやったことは「無い」です。

さて、私も口八丁で生きてきた人間ですが、その口八丁と、語彙だけで技術力を誇示することを一緒にされるのは、ちょっと悲しいですね(涙)。

面白い会社

面白い会社

だいぶ前から注目している小さなIT企業があります。評価は色々あるようですが、ビジネスとして成立している事は事実だけでも私は凄いと思っています。(お断り無く書いておりますので、もし当該社の方からの削除や修正の要請があれば、お問い合わせください)

ブレイズ・コンサルティング
この会社は「BRMSの専門集団」と宣言している通り、創業以来、BRMSを対象に販売、導入、保守をしてきている会社です。海外製のBRMSを取り扱っています。

社長をされている酒匂さんとは面識もありませんが、BRMSと比較的近い畑にいたせいで、お名前は随分前から存じ上げております。彼がカントリーマネージャーをやっていたFICO…、当時はFiarIaaCで取り扱っているBlazeAdvisorは、当時のスコアリング、あるいはルールエンジンと呼ばれた時代にフラッグシップ的な立ち位置だったと記憶しています。その後、FICOを離れて、独立後されて立ち上げた会社に「Blazeコンサルティング」と名づけられた時には、少し生々しい感覚を覚えたものです(笑)。
さて、その後、同社が或る意味でユニークな立場と思ったのが、取り扱い製品にCorticonを選んだところからです。恐らく2003年ぐらいではなかったでしょうか。まだカナダでもスタートアップに近いCorticonの製品は、エクセル的な入力で論理(ルール)を構築するという、かなりドラスティックなインターフェイスを提供していました。その後のルールエンジンの草分けとも言っていいでしょう。当時、他のルールエンジンではJavaなどでの作りこみが当然視されているところに「ビジネスユーザーが即座にルールを変更できる」と言うアプローチはとても新鮮でした。そんな製品に目をつけて、日本で展開したのがブレイズコンサルティングだったと記憶しています。
そして、そのCorticonを引っさげてルールエンジンの主戦場だった金融、特に生保業界に売り込み、Corticonと言う名前が一般に浸透するまでにしたのですから、凄い業績だと思います。
しかし、このように順調に行くかと思っていたところで…CorticonがProgress Softwareに買収されます。数年前はSonic Softwareの名前で知られていたProgressですが、競合的な立場のIONA社と合併したりと、精力的に拡大政策を進めている中での出来事でした。
はしくれが端から見ていた感じでは「知見はブレイズ、製品はプログレ…。複雑すぎる…。」と懸念したところで、2012年、プログレス本社がCorticonを除くぼぼ全ての製品ラインアップを他社に売却してしまします。これはびっくりでした。それまで拡大一辺倒だった会社が、一気に勝手に縮小していくのですから。更に更にです。今度はアシスト社がProgress Softwareとの提携を強め、2013年にCorticonの販売を開始します。「知見はブレイズ、製品はプログレ、んで市場展開力はアシスト…」更に複雑な状況に入ります。

普通ならですね…。このような状況になると、中堅以上のSIerなら製品というよりBRMSからの撤退と言う選択をしていたと思うのです。小さいところだと、業態すら変える…SESに走るような場面だと思うのです。何故なら、ある時点までは「これが一番」と言っていた製品が、舞い散る花びらのように、捉えどころがなくなった状態ですからね。実際、SIerが外部製品と提携、いわゆる「担ぐ」ことを検討する場面で、必ず話題に上がるのは「財務」状況です。言い換えると「買収される可能性」ですね。買収されてしまうと、どんなに製品が良くても代理店SIerにはコントロール不可能な状態になります。買収が起きた時点で、実質、「担いだ」製品を肩から降ろしてしまうことは少なくありません。
「折角、人やスキルを作り上げたんだから、別製品に乗り換えれば?」
いや、これが中々、難しいんですね。まず、「製品Aが最高です」と言っていた口が、別の日には「製品Bの方が良い」とは、中々言えません。また、人間やスキルも(キャラクタによりますが)知見の横展開ができずに、ほぼスクラッチからのトレーニングが必要な場合もある。更に、商流サポート契約などで乗換え後も、旧製品の面倒は見なければならないこともある。
こういった手間=コストを考えると、サポート契約が終了した段階で「完全終了」になるように、段階的な幕引きに入る事が通常なのです。

ところが、ブレイズコンサルティングは、やったんですねぇ。乗換えを。FICO ⇒ Corticon ⇒ 「Sparkling Logic SMARTS」。

凄いと思います。本当に、色々な言葉や思いを書きたいんですが、左の一言で纏めてしまうのが一番、良いかと。

そして、この事はSES会社で特にSES業務に満足していない方に知って頂きたいのです。
・少人数でも市場やグローバル企業を動かす力を持てる
・継続と柔軟さで大波を乗り越える事ができる

「小さいからできる」ではなく、「小さくてもできる」だと思うのです。

「出来る理由」を探してみよう

いや、はしくれの様なダメ人間が書くようなことではありませんが、よく聞く話で、また萎える話が「うちでは無理」です。
何が無理やねん!と思ってしまうアホは、コチラなのですが。

実際、無理と言う単語が簡単に使われすぎるのです。逆に、無理と言っている理由が「無知」から来ているような気がします。
例えば
「うち、英語できる人がいないからマニュアルの翻訳なんて無理!」⇒翻訳自体は外注発注しましょう。そのレビューはできませんか?
「うち、金融機関なんてやったことないから無理!」⇒どの業界なら出来るんですか?寧ろ業種に特化しない「作り」に特化してみませんか?
ようは、スキームの作り方で適材になれる部分があるはずなんですが、まるで自社が全てを作るようにして「無理」と言うんですよね。
逆に…スキームを作れないのでしょうか?

ダメ人間の視点で言うと「御社の営業さん。経費で呑んでいる意味あるのですか?」と言いたくなる会社さんが沢山あります。まぁ、正直、その恩恵に浴したことが無いわけではないのですが(笑)。酒の場の話としても「社内消費」「社内接待」が多すぎるように思う会社もあります。その予算があれば、少しでも昔のお客さんや取引先を探すことも出来そうなのですが…ねぇ。

昔、ある種の禁じてですが…。外資のベンダーにいた時に、どうしてもお客様の要求に沿うような構成を作れないことがありました。当時のベンダーは、そこそこ幅広な製品を揃えていて、そこそこソリューションを構成することができたのです。が、そんな中で「コア」になるモノを「コードに逃げる」ような事はしたくなかったのですね。別な言い方をするとコアにぴったりと収まるコアな製品が幾つかあったのです。そこで、その幾つかにアタックをして協同ソリューションが可能かどうかを聞いてみました。この時点では商流なんてことより「うちの提案に組み込んでもOKですか?」と言う事と、こちらで想定している機能やキーポイントが提供されているかの確認が主です。
おおよそ、この時点で大抵の会社は「いやぁ…厳しいなぁ…」と断られます。が、とあるA社は「あ、面白いかも」と乗ってくれまして(笑)。一応、上手くお客様に認めて頂けました。スキームとしては一応、私のいた会社がプライムになって動くけど、契約とかは本社マターまで上がってしまうので、あくまで個々に契約をしてもらうという事にして、また別途PMOが立ち上がっていたので、こちらとA社の導入チームが別途動く形にしておりました。まぁ、今でしたらPMOなり、あるいは別途SI会社をPMとしてプライムにしてしまう事もありだったのかも知れませんが(笑)。
ある意味、そういった「自由度」「柔軟性」が前提にはなりますが、スキームを作り出すことは根性だけの問題です。

逆に悪手です…。
これも外資ベンダーの頃にSIパートナーのX社が見つけてきた案件でのヘルプを依頼された同僚がいました。内容としてはX社が不得意(知見なし)な業種でのソリューション提案の作成ですね。ただ不幸な事に、それを引き受けた同僚は「何でも聞いてください」と堂々といえる…なんつーか…余り経験のない…いや、活きていないタイプの方でして…、途中で殆どGive Upの状態になりました。そこで彼が打った手が、別のSIパートナーY社(大手)にヘルプを請うという…私には思いつかない手でした(笑)。案件はXの案件です。これに別のSI会社がつくということは…。下手をすれば案件のハイジャックが起きるわけです。Yにしても、Xのアンダーで動くことは、まず有り得ません。簡単に言えば、Xが提示するSE単価ではY社のSEさんの給与は賄えなさそうなレベルなのです(だから、私には思いつかなかったのです)。この状況を知ってか知らずか、同僚氏はY社とのコンタクトを営業に依頼しています。そこでもぉやむを得ず「それさ、会社としての信頼問題に関わるし、NDAへの違反になるよ」と言う旨をやさしく伝えて止めました。スキームを作るのは簡単なのです。が、その下敷きになるアイデアを幾つかの側面から考えておかないと、とんでもない事に成りかねないのです。

この様に出来る理由を外に求めることは、一つの解決策になる訳です。

では、内側に求めることはできないのでしょうか?
恐らく、外に求めるよりも難しいのでは?というのが、私なりの結論です。いや、だからこそ「出来ない」が正当化できてしまっているのではないでしょうか?
これも聞いた話で恐縮ですが、ある会社の若手マネージャーさんが「英語ができないことがビジネスの障害になっている」と思い、直接、人事部の教育担当、更には人事部長に掛け合って、社員教育の中に英語教育をねじ込もうとしたそうです。彼としては、解決策を内側に求めたい、ある意味、育成する時間的な余裕をみての直談判になったようです。当然、この動きは上司も知っての動きだったと言います。
ところが人事部の回答は無碍なもので「君の苦労や心配は理解した。が、英語が必要と言う状況は全社的に見ても稀。つまり、会社として英語教育の費用は負担できず、部門に持ち帰った上で部門予算で計上可能かを検討してもらいたい」との事でした。上司…更には部門長も、この回答には怒り心頭だったようですが、実際に経営レベルでの会話には持ち上げられず、彼の希望は頓挫してしまいます。
ここから、二つの問題…つながりを考えると一つの大きな問題を感じるのですね。
まず、資金還流という意味では、私が書いたような問題解決を外に求めるより、内側で完結する方が有利なのは自明の理です。また、育成期間という猶予を取れるのであれば、人・物・金の原則でも、希望者(対象者)の有無、教育機関の検討、予算と明確になるのです。ところが、金が出せない。その理由は「個別的要件だから」と言う、そうですね…「浅はか」と言っていい理由で終了です。

このような内なる壁が存在し、それがビジネスの障害になっている、あるいは、なる可能性が高いのであれば、外に解決策を求める必要があるのです。それもしないで「うちでは出来ない」というのは…、少々、甘いと思うのです。