口八町

SES企業の社員さんと会話していると、とても感心する事があります。いわゆる技術用語に強いのですね。会話をしていると業界用語とも言える技術用語が飛び交いますし、饒舌な方が多いのですね。ただ、お客様との打ち合わせになると、急に無口になってしまわれたり、会話がかみ合わないケースが少なくありません。

これは、外資にいたときにも少なからず経験してきたことなのです。特に教育などがキチンとしていたり、あるいはドキュメントを熟読していると一種の「洗脳」がおきます。そうすると一般用語化していない「自社用語」と「英語」で頭の中で製品情報が埋まってしまうのです。すると、お客様と会話していても「カタカナ禁止」だとか「英語は判らん」と言われて門前払い同然の扱いを受けます。

特にSESで開発をやっている方だと、お客様(事業会社のことです)も、技術畑の方が多く技術用語も受け入れられやすいのでしょうが…。

そして、時々感じるのは技術用語の「語彙数」が技術力のように思っている人が少なからずいることです。これは、別に開発エンジニアだけではなく営業職の方にも「業界用語」「専門用語」として相似形の症状が見られます。実際、お客様と会話するときには、その業界の語彙は必須ですよね。ただ、それが「土管」のように中身が無い事が少なくないんです。世に言う「御用聞き営業」って奴ですね。これと同じようにエンジニアの人たちが使う専門用語も、意味がないのですね。

昔、こんな事がありました。ベンダーとして、ある大手のSIerに製品説明を行っていたときにです。「製品内にオープンソースや3rd Party製品は使っていますか?」との質問を頂きました。今どき、ほとんどのソフトウェアが100%自社製品…スクラッチ開発しているなんてことはありません。当時の製品でも同じです。ですから「利用はしています。コマンドラインなどで立ち上げたときに露出するものもありますし、恐らく露出しないものもあります」と回答しました。すると待ち構えていたように「では、その製品一覧を提示してください」と…。
「んで、結果、どうしたの?」と聞かれれば(笑)。出しませんし、出せません。まず、そんなものを出した日には、こちとら社内でコンプラ違反に成りかねません。何故なら、どのマニュアルにも開示情報にも書かれていないのですから、もし知っていても本社の許可無く出すことなんてできるわけがないのです。
「じゃ、本社の確認取れば良いじゃん」と…(笑)。もし、そう言われても、そのSIerさんの為に断ったと思いますね。リエンジニアリングされるんじゃないかと言うのは、外資で案外、気にされるところです。この疑いを持たれると、質問を投げてきた社名を必ず聞かれます「それA社じゃないよな?」とか(笑)。すると、ビンゴでも「違う、B社ですよー。」と誤魔化さないとならなくなるんですねぇ。
で大抵、回答の代わりに逆質問を一度しないとならんのです。「で、そのリストが何の役に立つのですか?」と。まぁ、大抵は「セキュリティチェック」とかって仰る訳ですが、まぁ当時の時点でバックドアなんぞと言う語彙は一般化しておらず。まぁ「本社に確認しますね」として纏めると。
本当にそれでも必要なら、開発やマーケティングエスカレーションです。で、現地とダイレクトに会話してもらう事になります。通訳の手配もしますし、日程の調整もするんですが…。ただ、実際にやったことは「無い」です。

さて、私も口八丁で生きてきた人間ですが、その口八丁と、語彙だけで技術力を誇示することを一緒にされるのは、ちょっと悲しいですね(涙)。