見積もり精度って…

SESの批判が続くようで申し訳ないのですが。SESが抱える問題の本質が「人間」だと思うので、もう少し続けさせてください。
SESを提供する会社は人材が「財」であることは表向きだけではなく、本当の事だと思います。
類似の業態には、派遣、コンサルテーションもありますが、派遣の場合、業務の指示はお客様が出せますがSESの場合は業務委託になるので所属が出すことになりますよね。ところが、下請・孫請の場合、派遣と変わりなく元請あるいは上位の請負会社のスタッフが指示を出してきます。
純粋に法理に照らせば、違法です。これが「財」に対する一つの裏切りです。

次に財が会社に対する思いです。下請レベルの会社でも、離職率が非常に高いのが実情です。例えばコンサルテーションでも離職率は高いのですが、意味が違うのです。コンサルテーションの離職の場合、一定のスキルあるいは市場を身につけて出て行きます。その実績は顧客と結びついて、独立したときにはマーケティング活動抜きでビジネスを始める事ができるのです。が、SESの場合、スキルが身についていません。いや、言い方を変えましょう。SESの場合、局面的なスキル、例えばプログラミングやサーバー構成などのスキルは身についていて、しかも資格も持っていながら、それを展開するスキルがありません。そのため、コンサルテーションに異動しても本人は「栄達」したかのように振舞いながら、実際には何もコンサルができない人が多いように思います(一年、あるお客様で特定のテーマについて会話し続けたファームの方々は、未だに「方針策定」の真っ只中に閉じこもったまま外に出てきません)。あ、コンサルをDisってしまっているかな?
いや、寧ろコンサルテーションの質が下がるくらいSESの社員のレベルが低いのです。

この原因として「プロフェッショナリズム」が関係していると思っています。若いエンジニアなら得意な言語のプロを目指すことが悪いことだとは思いません。しかし、その指向が30代後半、40代にまで引きづられているとスーパーエンジニアか痛いエンジニアの何れかになっているのです。
スーパーエンジニアは、アーキテクトとしてお客様の要件に応じた道具立てと筋道を考える事ができます。一方、痛いエンジニアの場合は「判りません」「出来ません」をプログラム言語の表記に沿って答えるだけになります。
実は、外資のソフトベンダーにいた時ですが、痛いエンジニアさんを担当につけて頂いたパートナーのSES会社さんがありました。一定の教育もほぼ終わり、数ヶ月して提案後半に入ったのでレビューを兼ねて打ち合わせに来て欲しいと、その会社の取締役からメールが飛んできました。決して悪い話ではありませんし、喜んでお邪魔することにしたのですが…。
ぱっと見、スケジュールに置かれた「カスタマイズ」の文字が目立ちすぎるのです。要件定義でも詳細設計でも相当な期間を掛けています。
そこで費用感を示したページを見ても費用が嵩んでいます。そこで社内用としたページを見せてもらいました。すると要件の多くが「カスタマイズ」としてマークされているのです。ここでの問題は2つあります。一つは、カスタマイズをする必要も無いのに積み上げられた要件の山です。「あら、これ出来ますよ」と言った時、いや言う直前、「こう言った時に、どう反応するのかな?」と思って話してみました。模範解答は「いや、一応、リスクのことも考えて、ここに積んでいるんです」です。が、彼の返事は「あれ?そうでしたっけ?あぁ…」。これは想定した中の一つですが、まぁ最悪の回答ですね。次が、彼の知識によって製品機能が縮小されてしまっているということです。お客様がマニュアルと首っ引きになるとすれば、まぁ保守フェーズに入ってからですね。時々、提案段階で製品マニュアルを読み込んでくれる方もいますが、稀です。また、契約前には規則でマニュアル開示を許さないところもありますし。では、どうやってお客様はカスタマイズの正当性を評価するのかといえば、IT企業の見積を信頼するしかありません。「たかいー!」「ねびけー!」とは言われても、見積(調査〜工数算出)をやった結果が金額として提示されているのですから、そう易々とは安く出来ません。つまりは、この見積が高いと言われても、カスタマイズ費用が掛かりすぎるといわれても、それらの工数は「正」なのです。そして恐ろしいのは、その「正」とされた数値や根拠が代理店の若く優秀なエンジニアに独り占めされているのです。
お客様の立場なら、よくわからないツールや基盤サービスを利用する場合、どのような機能を持っているのか、要件に対処できるのかを徹底的に調べておくべきでしょう。逆にIT企業の場合には、お客様に初期の段階からデモや説明会を重ねることで機能の理解やカスタマイズを無駄に重ねない説得や教化、コンサルテーションの実施が必要だと思います。