日本語ができない代理店ビジネス

先日、某社が代理店をしている海外製品のWebサイトが改訂されていたので参考として拝読しておりました。
UI的には従来よりも近代的(笑)になっていたのですが、なぜか言葉が入ってこないのです。一応、紹介されていたソリューションには知見もあり、寧ろ…、と思い、知見の無い方に紹介して印象を聞いてみました。返事は「わかり易いよ!」です。思ったとおりの返事だったので「何がわかり易かったか、教えてもらえますか?」と重ねて質問してみます。すると「いや、絵も多いし、内容が細かく書かれていて良かった」。(はい、想像通りでした)。

インプレッションはWebサイトで大切な構成要素ですね。ただ、ソリューション紹介をしようとすれば、コンテンツは文字情報を含みます。その文字情報が良くないのです。実例を提示しつつ添削式に説明できれば…わかり易いのでしょうが。スミマセン。

これは海外製品慣れの問題なのでしょうが…。英語が日本語になっただけの資料。と言う印象が強い文章だからなんですね。
「正確な日本語訳に文句つけるな!」と言われそうですが、恐らく、外資でプリセールスやマーケティングを長くやられている方、それもコンテンツに対するレギュレーションに一定の改訂自由度を与えられている方なら「訳文は不要」と仰るのではないでしょうか?
正直、自分が本社やベンダーから貰ったプレゼンを、そのまま使うような事は、痛い目を何度か見てからは皆無です。まぁこれも失敗体験でしょう。痛い目、つまり「それさ、わかんない」と言う言葉を婉曲に表現されてからですね。例え日本語で書かれたものでも、一旦、自分の言葉で書き直したり、あるいは内容を確認していかなければ全く使えません。
こんな経験をしたことはありませんか?プレゼンテータが、画面に書かれた言葉だけを話して終わるというプレゼン。私は、アレが苦手なのです。見るのも、そしてやることも。文字を読み上げる事が目的なら、何も人を集める必要は無いはずなのです。SEさんに多い病理のような気すらしています。
同様に、資料が全く「噛み砕けていない」ケースも多いのですね。「生産性が向上しました」なんて売り口上を威勢よく話しても、定番の突っ込み「その根拠は?」に耐えられない。「いや、貰った資料ですから」とか「触ったらダメだと思いました」と言うのですが…。
決してプレゼンが得意ではないのですが「プレゼンなんて会話のトリガーじゃん」と割り切ってしまう私は、貰ったパワーポイントファイルを時間が許す限りいじり倒します。元が英文なら固有名詞を除いて、カタカナとアルファベットを一切残さない覚悟でいじります。それでも「お客様を英雄にするために生を受けた、世界最高水準の先進的な製品」とか(適当な例でごめんなさい)、まぁ「日本で、そんな表現しないから」と言うものも駆逐します。

こういった表現は聞く側に痛くも無い腹を探られると言うか、結局は無益な突込みを受け続けて終始するか、「日本語で説明してくれないか?」と言う冷たい言葉で終了するのです。

確かにテクニックとして、英語の表現やカタカナ言葉を使うこともあります。ただ、それは半ば意識して
・会話の中で充分に通用する
・少し海外製品だと認識させる
・テキトーにごまかす
の何れかの場合に限定すべきでしょうし、テキトーに誤魔化したい場合には予め、突っ込みに対する防御方法を考えておく必要があります。

海外製品慣れをしてくると、経験からこの様な対応が自然に出来るようになってきます。時には「あ、良かった。やっと日本語で説明してもらえた」と競合優位性になることもあるのです。しかし、その為に必要なのは、実は日本語の能力だと思っています。
「お前の日本語は、酷いな」と言われるのは覚悟の上ですが(笑)。
つまり、書きなれていない、説明しなれていないのと同じなのですね。これは外人がプレゼン準備をしている時に気づいたのですが、彼らは
・参加者数
・参加者の職位(最高レベル)
・参加者の担当業務
を気にします。それが判ると、パワーポイントの構成変更をするのです。時間があれば、こちらからのリクエストでページの追加もしながら、全体として特に、最高位の参加者が訴求点を理解できるように構成するのですね。

同席や参加をしてモヤモヤするのが常時同じパワーポイントを使い続ける人です。非常に話しなれているので、ページ送りのタイミングや呼吸の入れ方など、とてもスムースに進みます。が、スムースに進んで何も質問が出ない、あるいは説明後のQ&Aで藪から棒の質問にのた打ち回る。など、あまり良い参考にはなりませんでしたし、お客様も結果として「んで?何を説明したかったの?」で終わってしまうのです。色々な意味でもったいないのです。これは、参加者として一回だけ聞くような場合でも「あ、この人、毎度、このパワーポイントなんだろうな」と想像できてしまうので、要注意です。
もっと悪い例です。同僚だった中国人が謎の経路で入手したプレゼンを引き合い先にお披露目したときの事です。プレゼンはカスタマイズなどの柔軟性を説明することを主目的にしていたのですが、「自動車」や「家」の写真だけのスライドが何ページか出てきたのです。彼としては入手したまま日本語にした方が良いと判断したようですが、写真のスライドには何の説明も無く、お客様からの半ば突っ込みのような質問に「謎です」とコメントし彼を除く同僚の間では「謎プレゼン」として伝説になってしまいました。
(本当は、「買ったままで使うのも良いけど、自分が使いやすいように改造するのが当たり前でしょ。車だって、家だって」と言う意味なのです)。端から見ると、完全に笑い話ですが、実際には商機の逸失ですし、プレゼンをやるときには相手が判っていなければなりません。表層的に日本語にしただけでは判らないのですね。

少なくとも、まだしばらくの間、このblogを呼んで頂いている皆様にとっての「聴衆」は日本人で日本語がネイティブな方々です。言語は共通です。しかし、経験や責任、得意・不得意があるのです。その違いを意識しながらプレゼンをやってみる、あるいは資料を作ってみると、たぶん、滑らないで済むと思います。

先手必勝

下請としてSESを主体にビジネスをやっている会社が新規ビジネスに立ち上げようとして、上手くいかないパターンがあります。
最も多いパターンが「3rd Party製品を担ぐ」と言うモデルでしょう。

特に海外製品で日本に乗り出してくるときには担ぎ手としての参入障壁が小さく、また他社が検討や少しでも先に行っていれば、リスクも小さいように見える分、名乗りを上げやすいのですね。
さて、ここからが問題です。
担ぐときの先棒を持っているのが、社長さんや取締役などだと担ぎ上げるまでは社内で誰も反対していません。ところが担ぐ事が決まると、先棒にいた筈の人たちは応援に廻って、実際には「現場主導」となるのです。
ベンダーの立場では、パートナーシップ担当なども先棒から抜け出てしまう事があります。こうなると「○○社が△△国の■■と協業」という小さなプレスリリースが出たところで、実は何も動かなかった。なんて事も珍しくありません。
この壁を越えても、下請SES会社には
マーケティングができない
・リード生成ができない
・導入(適用)シナリオが作れない
などなどのナイナイづくしが始まります。特にリード生成と導入シナリオは、下請だけではなく大手でも苦労する部分です。これが「会社としての強み」があるか否かによって決まっているのですね。だから、ベンダーから見ていると、こういった失敗パターンに入る会社さんの要求は、ようやくできたリード先に訪問する直前になってから「事例が欲しい」と言い出し、そして訪問後は「もっと具体的な事例が欲しい」へと進むのです。したり顔の方からは「当たり前でしょう」と言われますが、このパターンで上手くいった事は「 皆  無 」です。全てが後手に回っていると思った方が良いのです。
同様に事例を求められる場合でも、先棒を社長などが担いでいた時点でなら、可能性は高いと思います。例えばスタッフや現場のマネージャーから闊達な意見が出る中で「想定に類似した事例はありますか?」とか「想定になるようなヒントはありますか?」と言う質問として求められているケースですね。この場合なら、自社の中で一旦、噛み砕いてから持ち込む訳で、一定の想定問答ができています。いわば先手を取ろうとしているのです。当然、ベンダーとしても、この時点で事例を開示する事が難しい場合もありますが、少なくとも健全なやり取りができるのです。

また先ほど書いたような「他者が少しでも先に進んでいる」ケースです。これは文字通り後手に廻っている状況なのです。最近では事業会社さんの方が寧ろ「手垢がついてるのは嫌だね」と言う場面も多いのです。ところが下請などリスクを嫌う風土が出来上がっていると、お客様のこんな声は聞こえるはずもありません。結果として先行した側には知見もリードも溜まっていくのに、後続となるとリードが出てくるだけで御の字の状況になります。そして、そのリードも直接ベンダーに問い合わせられた引合を貰い受ける形に集中してしまうのです。「いや実績ができてくるまでは辛いよね」とベンダーとSES会社の営業同士が傷をなめあうような場面は何度も見てきましたが、実際には実績を積む前に終わってしまいます。

ここまで書けばお気づきでしょうが、問題は「リード」です。いわゆる案件生成ですね。
全くの感覚的な話ですが、シニアの営業経験者を始め、どうもIT業界では変化に気づいていないのではと思わせる節があります。
以前にも書いた話ですが、既にシステムの追加や改善のキーは「事業部門」へ移っています。特にキーになのは「営業戦略」です。
「いや、ERPなど大型案件は経理や人事などバックオフィスだし、取りまとめが必要なのだからシステム部門は切り離せない」と言われるかも知れませんが、はっきり書いてしまえば
『いまさらERPの沼に入るつもりなのですか?」と。

恐らく長いスパンで考えてもERPなどの基幹システムがなくなることはありませんし、世の趨勢として新たな知見が生み出されてくるでしょう。でも、そこを狙う事が得策とは思えないのです。ERPの導入となれば、最低でも5〜6人のチームが必要です。並行稼動などを考えれば1年〜2年、ほぼ100%稼動でしょう。その間に次のリードに提案をし、また案件を確保しておかなければチームの維持ができません。潤沢にリードが出てくるなら案件と共に人材を育成できるのでしょうが、恐らくSES会社の風土では「並行稼動までの間に次の案件が取れれば良いや」となっていないでしょうか?こんなリスキーな状況は、お勧めしたくありません。
何故なら、リードの生成をイメージしていないからです。

以前、ある業務会社系のSES会社が大手ベンダー製品の代理店となった事があります。現場のマネージャーの期待は「これでリードが生まれる」だったのです。が、ベンダーとSES会社ではリードの概念が違います。
考えて見ましょう。SESならばスキルシートをお客様や上位の請会社へ提示すれば良いのですし、その引合は一定の確度で提示されてきます。多くはプロジェクトのキックオフに合わせるか…劫火の中で人身御供として鎮火に走るというタイミングですね。ですから、リード=契約なのです。ところがベンダーでは、引合が生まれた段階から代理店に案件を引き渡すことも少なくありません。まだ海のものとも山のものとも言えない段階です。リード≠契約ですね。当然、制約率は低いのです。ところが、代理店ビジネスに明るくなかったマネージャー氏は疑心暗鬼にかられます。「あいつら、うちを馬鹿にして確度の低い案件ばかりを流してくる」と。いや、確度が高くなったら、恐らく代理店が動く必要がなくなりますし、それこそSESを提供することしか期待されないのです。それがベンダーから見た代理店の責務なのですが…。
自分の経験でいえば、ベンダーのプリセールスとして健全にノルマや売上目標を見据えて働くためには、同時に3案件は抱えている必要があったと思います。できれば5案件は抱えていたいのですが、こうなってくると…私生活が破綻し始めるので、3案件が心地よいのですね。SESの会社の発想だと「3件の契約を見据えた体制をとれというのか?」と言う話になりますが、これも頭の中のネジを疑う話でして…。プロジェクトのカットオーバー時期やキックオフ時期などは、大抵、何らかの調整ができます。あ、RFPなどでスタートした案件ならば別ですが、引合が問い合わせベースで始まったケースなら、まず間違いなく調整できるのです。またSES会社の多くは、こういった代理店活動のために人を割り当てすぎます。「導入や設定の知見を養っておかなければ」と言って人を貼り付けてしまうのですが、プロの設定屋がプリセールスに廻るとですね…以前にも書いたように「技術的には可能だが現実解ではない」提案や「ビビリすぎ」た萎縮した提案に陥ります。確かにSES会社の視点はプロの設定屋が語らないと不安なのでしょう。が、正直、ベンダー目線で言うと「あれでプロ?」と思う事が少なくないのです。もう少し厳しく平たく言えば「商売の邪魔」です。
彼らの口から「これを使えば、この課題をクリアすることができます」なんて話は聞いた事がないのです。
「それって営業の台詞でしょ?」いや、違います。これを営業だけが言っているようでは、導入後の技術的な担保が果たせないのです。更に言えば、営業が説得力・背景のある提案ができると思いますか?経験からしてゼロではありませんが、稀有です。
重ねになるかも知れませんが、本来、一つの会社の中でも商流は出来上がるはずなのです。マーケティング⇒営業⇒プリセールス⇒開発・導入⇒サポートと言う流れです。
これが、更に健全に流れると、開発・導入⇒営業⇒(以下、続く)と言うサイクルが形成されて「Up Sell」が出来てくるのですね。
ところが下請SES会社の場合、営業職はいるものの商流が形成できていません。引合に対するカウンターや、要員「派遣」後のケアが仕事になっているのです。中にはガツガツとプロジェクト内での派遣要員を増やすように努力されている会社もありますが、それは顧客を「元請」としているだけで多重請負構造の中での適応種だとは思いますが…。

リードを作る方法論は、多種多様です。が、何らかのリスクから逃げるのではなく、受容あるいは軽減する方策を考えて筋を作らなければ先手を奪うようなことはできません。先手を取ることは難しい上に、無駄も少なからずあります。しかし、そこから先行者特権が生まれていることも確かなのです。

コンサルテーションとは

下請を主としたSES会社のWebサイトや提案書などを拝見すると「豊富なコンサルテーション実績」を謳いあげていることが多いように思います。
これまで書いてきた「重層的請負構造」を考えると、本来の工程の中でSES会社がコンサルテーションを実施することは少ないと思うのですが…。

まず、コンサルテーションについて考えて見ましょう。
【コンサルテーション】相談。協議。専門家の診断や鑑定を受けること。
デジタル大辞泉)の解説 とあります。この理解で言えば、コンサルテーションが実施されるタイミングは常時発生していますし、そこで専門家として何らかの診断や提言を行う事は可能です。但し、一般にコンサルテーションは開発やシステム提案の上流工程に位置する「作業」として考えられています。また、その継続でコンサルタントとして工程を管理するものがコンサルテーション会社が提供するPMOとして理解されています。

では、SES会社が提供するコンサルテーションとは何でしょうか?
正直、私には理解ができていません。
理由は簡単で、彼らが好きな「工数」の中にコンサルテーションを意味する言葉がほぼ皆無だからです。全くでは無いのですが、その工数が提案内容を構成する他社製品の導入に対する作業で、内実は開発ベンダーが担当として積み上げられた工数になっているのですね。つまりSES会社の工数として「コンサルテーション」は実質「ゼロ」となっている事が多いのです。
ここを突っ込むと「ベンダーとしては豊富」だとか「別案件ではコンサルテーションをやっていた」とか、色々な言い訳が上がってくるのですが…。更に言えば、そういった会社でも若手をコンサルテーション会社に要員提供し、離任後は自社のコンサルテーション業務に就かせることもあるのです。が、こういった人が実質担う業務は
・出向いたコンサルテーション会社で求められた場合の対象要員
・コンサルテーション会社が企画・提案した開発案件のブリッジ、PMO要員
が主要な担当。そうですね、多層的請負の構造をコンサルテーションの業務に割り当てただけとなっているのですね。
悲しいかな、これを「箔」として、ブランド力のあるコンサルテーション会社へ転職する方も少なくないのが実情で、結果としてSES会社がコンサルテーション会社と同様の機能を独自に発揮することは、従来の枠組みの中では可能性「ゼロ」といわざるを得ません。

ただ、最初から可能性「ゼロ」と思って、経営者の方々がこのような業務を立ち上げようとしていない事は理解しています。まず、重層的請負構造の中では、工程及び商流の上流にいることが利益率を上げる近道に見えることです。事実は、恐らく従業員の平均給与を比較するだけでも明らかになると主のです。プライムでの取引関係の多さが給与と比例関係にあるはずです。もしかしたら、この関係性は製造業よりも激しく現れるかもしれません。また工程の上流を担いたいと思えば、自ずからプライムベンダーとなる必要があり、コンサルテーションからのRPFや顧客との直接取引を引き受けられる関係性が求められるわけです。
当たり前のように、一般的な下請SES会社でプライムベンダーと同等のお付き合いがお客様と成立している状況は珍しい訳です。するとコンサルテーションの実績には「?」をつけておく必要がありそうです。

少し見方を変えてみましょう。ビジネスで大手、中堅、そしてブティック型と呼ばれるような個人経営レベルまでの様々な専業コンサルテーションの方と御一緒したことがあります。またベンダーやIT企業でコンサルタントの肩書きをつけた方も沢山存じ上げています。当然、社風もですが、彼らの個々のキャラクタや仕事のやり方は、特にお客様との関係性が密な人ほど個性的な印象ですね。これが下請系から見ると「偉そう」と言う一言で片付けられます。実は私も同意するような個性の方も沢山お会いしてきました。ただ、これは…寧ろドロップアウトしそうな人に見られるのですね。と言うのも、一定のクラスタリングが出来てしまうからです。
1. 技術用語、特に英語のものを振り回す
2. 契約関係(委任・請負)の区別無く、請負前提で責任関係を定義する
3. 自身が作る成果物が「定義」となっていない
これがザックリとしたクラスタリングの結果です。
このようなコンサルタントが「偉そう」で片付けられることは…、いやコンサルタントに限らず自然な事だと思います。が、冒頭にも書いたように
コンサルテーションと言う「取り組み」は、随所で発生しますし、専門性をもったエンジニアなら何らかの形で取り組みに参画できると思うのです。しかし下請に限らずSES会社の自己矛盾は、コンサルテーションを謳い文句にしながら、その定義ができていないのです。つまり自分たちが「偉そう」で片付けたコンサルタントと同様、用語は使い、契約関係の中では曖昧に置き去りにして、コンサルテーションとしての定義は全くないのですね。

誰も突っ込んでいるところを見たことはありませんが、馬鹿な私にはとても不思議に思えるのです。

IT企業に未来はあるのか?

はしくれが若いころ、IT企業は
・メーカー系
・ユーザー系
・独立系
の三つに分類されていました。

メーカー系は、例えばIBM富士通のようにハードウェアを作り、またソフトウェアも作る会社のことですね。また、ユーザー系は○○銀行システムや○○食品テクノロジーのようにハード供給を受けている側、いわゆる事業会社の子会社でシステム構築を担う会社です。そして独立系は、この何れにも属していない会社の事です。

今でも「独立系の」とコピーを作っている会社もありますが、正直…「20世紀かよ」と言いたくなる思いです。このような分類、ある種の意味はあると思いますが、もう少し私風の分類をしようと思います。

・ネット事業系
・ゼネコン系
・パッケージ・SaaS
・SES系

で如何でしょう?

ネット事業系には、ゲームやコンテンツ作成なども含みます。立ち上げ参入の障壁が小さく、最終形態は「AMAZON」でしょう。ビジネスの中心にITの活用があり、アイデアと商機、運によって爆発的な成長が望めます。この分野は決済方法の多様化なども手伝って、今後の核となり得る一方、日本以外の企業のプレッシャーも強く、リスクも高い分野でしょう。

ゼネコン系の多くは、以前はメーカー系が担っていたのですが、商社などチャネルセールスを得意としていた企業も同列に並んでいる分野です。現状、IT業界のコアを形成しています。が、以前にも書いたCMOなど業務部門の決定力が強くなるにつれ、顧客とのパワーバランスが弱い方向だと考えています。その最たる理由が建築ゼネコンとは違い、同業者団体があるわけでもなく、かつ重厚長大なプロジェクトの中でプロパーとは言っても一部を除いて専門的なスキル養成が出来なくなってきているからです。ただ、多重下請構造と要員集約型の産業構造がある限りはプライドを保てるとは思います。

パッケージ・SaaS系は、今の日本で国際競争力が一番弱い分野だと思います。ゲーム・コンテンツをここから外しているため、余計に弱いのですね。ただ、本当は日本人が一番強くなれる分野だと思っています。その理由は品質基準です。無駄な工数を削減しながら、高品質なサービスを提供できれば、生き残る可能性が強いはずなのです。ネット事業よりは数倍の人が掛かりますが(だってネット事業は一人でも出来ますからね)、既に少人数でIPOをしている企業も多いのです。ただ、その多くが「日本仕様」に留まっており、中々、海外に打って出る事ができない商材なのが辛いところです。その壁を壊す事ができれば、未来は…。

・SES系は、派遣業との差別化を明確化できなければ先は無いでしょう。ゼネコン系も徐々に体力を落としてきている会社も増えていますが、その体力の減退に合わせて派遣単価を上げられなくなります。この事で優秀な学生の採用機会も減っていく状況となりますから、オフショア同様に安かろう悪かろうと言う図式が出来上がり兼ねないのです。外資にいた頃を含め、SES中心の会社ともお付き合いはありますが、何れも新事業を目指されていながら「マーケティングができない」「要件定義ができない」と言う商流・開発のいずれの場面でも上流工程に大きな欠陥があります。また、その欠陥を押さえ込むように雇用をしても、商材が充分にないためマーケティング活動が充分に行えていません。特にゼネコン系の下請が中核となっているような場合には、相当、厳しいと思います。

見積もり精度って…

SESの批判が続くようで申し訳ないのですが。SESが抱える問題の本質が「人間」だと思うので、もう少し続けさせてください。
SESを提供する会社は人材が「財」であることは表向きだけではなく、本当の事だと思います。
類似の業態には、派遣、コンサルテーションもありますが、派遣の場合、業務の指示はお客様が出せますがSESの場合は業務委託になるので所属が出すことになりますよね。ところが、下請・孫請の場合、派遣と変わりなく元請あるいは上位の請負会社のスタッフが指示を出してきます。
純粋に法理に照らせば、違法です。これが「財」に対する一つの裏切りです。

次に財が会社に対する思いです。下請レベルの会社でも、離職率が非常に高いのが実情です。例えばコンサルテーションでも離職率は高いのですが、意味が違うのです。コンサルテーションの離職の場合、一定のスキルあるいは市場を身につけて出て行きます。その実績は顧客と結びついて、独立したときにはマーケティング活動抜きでビジネスを始める事ができるのです。が、SESの場合、スキルが身についていません。いや、言い方を変えましょう。SESの場合、局面的なスキル、例えばプログラミングやサーバー構成などのスキルは身についていて、しかも資格も持っていながら、それを展開するスキルがありません。そのため、コンサルテーションに異動しても本人は「栄達」したかのように振舞いながら、実際には何もコンサルができない人が多いように思います(一年、あるお客様で特定のテーマについて会話し続けたファームの方々は、未だに「方針策定」の真っ只中に閉じこもったまま外に出てきません)。あ、コンサルをDisってしまっているかな?
いや、寧ろコンサルテーションの質が下がるくらいSESの社員のレベルが低いのです。

この原因として「プロフェッショナリズム」が関係していると思っています。若いエンジニアなら得意な言語のプロを目指すことが悪いことだとは思いません。しかし、その指向が30代後半、40代にまで引きづられているとスーパーエンジニアか痛いエンジニアの何れかになっているのです。
スーパーエンジニアは、アーキテクトとしてお客様の要件に応じた道具立てと筋道を考える事ができます。一方、痛いエンジニアの場合は「判りません」「出来ません」をプログラム言語の表記に沿って答えるだけになります。
実は、外資のソフトベンダーにいた時ですが、痛いエンジニアさんを担当につけて頂いたパートナーのSES会社さんがありました。一定の教育もほぼ終わり、数ヶ月して提案後半に入ったのでレビューを兼ねて打ち合わせに来て欲しいと、その会社の取締役からメールが飛んできました。決して悪い話ではありませんし、喜んでお邪魔することにしたのですが…。
ぱっと見、スケジュールに置かれた「カスタマイズ」の文字が目立ちすぎるのです。要件定義でも詳細設計でも相当な期間を掛けています。
そこで費用感を示したページを見ても費用が嵩んでいます。そこで社内用としたページを見せてもらいました。すると要件の多くが「カスタマイズ」としてマークされているのです。ここでの問題は2つあります。一つは、カスタマイズをする必要も無いのに積み上げられた要件の山です。「あら、これ出来ますよ」と言った時、いや言う直前、「こう言った時に、どう反応するのかな?」と思って話してみました。模範解答は「いや、一応、リスクのことも考えて、ここに積んでいるんです」です。が、彼の返事は「あれ?そうでしたっけ?あぁ…」。これは想定した中の一つですが、まぁ最悪の回答ですね。次が、彼の知識によって製品機能が縮小されてしまっているということです。お客様がマニュアルと首っ引きになるとすれば、まぁ保守フェーズに入ってからですね。時々、提案段階で製品マニュアルを読み込んでくれる方もいますが、稀です。また、契約前には規則でマニュアル開示を許さないところもありますし。では、どうやってお客様はカスタマイズの正当性を評価するのかといえば、IT企業の見積を信頼するしかありません。「たかいー!」「ねびけー!」とは言われても、見積(調査〜工数算出)をやった結果が金額として提示されているのですから、そう易々とは安く出来ません。つまりは、この見積が高いと言われても、カスタマイズ費用が掛かりすぎるといわれても、それらの工数は「正」なのです。そして恐ろしいのは、その「正」とされた数値や根拠が代理店の若く優秀なエンジニアに独り占めされているのです。
お客様の立場なら、よくわからないツールや基盤サービスを利用する場合、どのような機能を持っているのか、要件に対処できるのかを徹底的に調べておくべきでしょう。逆にIT企業の場合には、お客様に初期の段階からデモや説明会を重ねることで機能の理解やカスタマイズを無駄に重ねない説得や教化、コンサルテーションの実施が必要だと思います。

じょ、ジョブデスクリプションって…(笑)

私自身がSESの会社にいた頃の話です。ご他聞に漏れず「新規事業を立ち上げたい」と言うお誘いで入社しました。その会社としては珍しい海外製品の一時代理店としてのビジネスでしたし、中々、苦労の連続でした。
ただ当初から「導入工程はベンダー側か別途PMを立てろ」と言うことはお約束になっていたのですね。そして約半年、端から見ればトントン拍子に、中の人としては学習・調整・顧客対応にベンダーの大失態へのリカバリーと、ほぼ休み無く働きづめの状況でした。そんな中で「人を追加するか?」と上司に言われ、何人か社内面談もしたのですが、全員、口をそろえて「英語は無理」と言う常態。プレゼンだけでもと思い、その中でも一人だけ2次面談で経験をプレゼンでアピールしてもらいましたが…いわゆるスキルシートは美しいのに、自分の経験を説明したりQ&Aをしてもらうと、中身が一切わからないのですね。業務経験としては、正直アウトでした(それもあって、以前「新規事業を余剰人員対策にするな」)と書いたわけです。

さて、そのトントン拍子の状況からPM要員を外に求めることになったのです。人事にも「念のため」で募集が掛かったら即対応するように根回しもして、上司が依頼申請をすればOKな段取りになっていました。が…。音沙汰がない。いや、何人かレジュメは来たのですが、誰も特技や経験に「英語」が無いのです。抱えている製品を考えれば、私のレポートを見ていれば、英語が必須、その他の技術的要素も判ろうはずですが。で、人事にコソッと聞いたのですね。どんな募集要項になっているかを。そうしたら「PM経験者で伺っています」と…。
少し種明かしの前に、ここまでの顛末をまとめてみましょう。
1) 案件先が契約を前提に導入スケジュールを求めてきた
2) 案件先が従来考えていた導入時期を踏まえ、早期にプロジェクトを立ち上げ導入の完了が必要
3) ベンダーには日本語ができる技術リソースがないので、自社リソースが必要
4) 早期にジョブディスクリプションを纏め、人事に中途採用を依頼してほしい
と言うのが上司へ打ったメール(朧な記憶から再現)です。

で、これを送信した直後に上司に「中途採用の依頼をメールでしています。ジョブディスクリプションを書く時間がちょっと無いのですが…」といったら「こちらで書けるよ。書いたらレビューして貰えるかな(にっこり)」と上司の優しい即答で安心していたのですね。ところがレビューなど関係なしにレジュメが来ると言う怪奇現象が起き、しかもテキセイニギモン!と言う方々ばかり。そこで怪奇現象の謎を解くべ
To 人事「もしかして、この前の事前相談で採用フェーズに入ってますか?」
From 人事「いえ。そちらの上司さんからの依頼で動いています」
To 人事「あひゃ。じゃ、ジョブディスクリプションや採用要件とかは…?」
From 人事「詳細は来ていませんが、PM経験者と言うことで動いています」

そうなんです。SESの下請に熟達した上司様にはジョブディスクリプションがどうやら理解できておらず、かと言って「急募」の状況から、こちらに振りなおしも(たぶん、恥ずかしくて)できず、エイッヤッで人事部に申請しちゃったようなんです。
で、この期間だけで2ヶ月を棒に振り、結果、私がPMをやったんですが…詳細は以下略で(笑)

ここからのLessons & Learnedです。
まずジョブディスクリプション(業務記述書)ですが、欧米の企業が人材募集をする際には必ず公開される情報です。あちらでは特定の業務に即応できる人材を採用するという感覚なのでしょう。ターゲットの
・学歴、学位
・居住地
・出張の有無
・必要な(自然)言語とレベル
・想定する業務経験
・想定する技術経験
などが書かれており、それぞれに「必要」「好ましい」とランクが置かれています。
そう、一般的に面接などで聞く内容です。が、それが書けない…。
下請SESのビジネスなら定型フォームに技術要素・業務要素を書いてもらえばOKなわけです。逆に提示されるものも、そんな感じでアピールがどうのこうのなんて関係ないのでしょうね。

ただ、当然、こんな感じで募集をしても適切な人材採用には結びつきません。先ほども書いたように、英語が必要なのに「無経験」(未経験ではない)とか、プレゼンやトレーナー業務は苦手、顧客との折衝の経験なし、予算やスケジュール管理のポイントにも見当違いの答えしか返ってこないなど「PMって…なんだ?」と言う疑問符にKO直前にされていましたし、他の業務やプロジェクトを見ていても、似たような状況に見舞われていたのですね。つまり私の上司様だけがスカポンタンだったわけではなく、人事へ採用申請を出せる役割(部長以上)にスカポンタンが集まっていたわけです。

もう少し書きます。
恐らく日本の会社でも呼び方は違えども採用要綱やジョブディスクリプションの作成が必要ですね。いずれにせよ目安でしかないのですが、それでも募集社は何をやって欲しいのか、それに必要と思うスキルやスキルレベルは何かを伝え、逆に応募者側は自分の何がヒットするかを探すのです。これ転職を重ねた身としては、個人情報を晒す唯一の拠り所なのですね。
ところが応募者にしても、募集社にしてもいい加減にしてしまうことがありますね。いずれにしても背に腹は代えられない状況だからかも知れませんが、寧ろお互いの不幸の元になってしまいます。特に募集社は「人財」と言うくらいにアピールしたいなら、せめて何をやって欲しいのかを書きなさい!

「知らない」「判らない」が正義

前回の投稿で古い記憶を呼び起こしたので、今回も古い話を元に書き始めます。

「私、その業界の事は知りません」と、案件の紹介をしている冒頭から腰を折られる事があります。「ご謙遜を」と取り成してみても、「いや、判らないので、この打ち合わせにいる意味があるのかなぁ」「トレーニングも受けていない人間ばかりが参加して、何か意味があるのかなぁ?」と更に症状が悪化していきます。紹介の打ち合わせを設定した担当者の顔を見ても「無」な感じで、空虚というより酷く後味の悪い印象だけが残ります。

若い頃、先輩から「良いか、お客さんに『判りませんは禁句だ』」と念押しをされながら、毎度のミーティングに参加していました。まだまだ下っ端で意見を出すレベルにも言っていないのですが、それでも無茶振りのような質問が飛んでくるのですね。先輩が同席しているので、安心感もあって、私自身はそれほど困った記憶はありません。
が、数年前、あるSES会社の部長さんとお客様先に訪問した時に「さぁ、最近の技術には疎くて」と部長さんが言い出したのです。いや、結構、そういう人には出会っていたのですが、この時は間が悪かったのでしょう。お客様から「え、部長さんは何しに来たの?」と直球の質問が投げつけられましたが、部長さんは「いや、紹介のアテンドです」と見事に明後日の方向に投げ返してしまいました。空気は悪くなるし、二度と同じお客様とは会う事が出来ませんでした。

逆に自分なら。と考えると、恐らくこの状況なら
・事前に打ち合わせを行い、アウトラインの理解をする
・自社での展開を含め、アテンドする意義を考察する
は最低限、やっておきます。
いや、これをやらないと単なる「口利き」でしかないのですね。

ただ最近、SESの文化を考えていると、部長さんのやり方が「当然のこと」として醸成されていたと理解しています(得心はしていませが)。

まず、彼がアポ取りを出来ただけでもNICEなことだったはずです。

国内のIT業界での多重下請構造の中で、お客様とのコンタクトやネゴシエーションすら分業化されています。このため、SESで「人」だけを出していた部長さんがソリューションや製品の紹介をするだけでも勇気が必要だったはずなのです。
ただ以前から書いている「新事業の立ち上げ」を検討していた部長さんなのですから、ビジネスの面では失格としか言えないのですが…。

このように分業化が進んでしまうと「知らない」「判らない」すら正義になってしまいます。分業化のメリットの一つはリスクを回避することにあると思っているのですが、リスクの発見として現場が「知らない」と言うことを知らせてくれているのですね。今ならパワハラ扱いですが、昔なら「勉強して出直して来い」って事なのですよ…。どうも「知らない」を言えないように刷り込まれた私などは、どうしても「判ることを探す」と言う旅を打ち合わせ中でもやっています(逆に「知らない」を正義にしている人とは話ができないのです)。無茶振りで何も情報もないままに拉致されるように客先打ち合わせに連れて行かれても、旅をしていれば、そして相手の方が本当に何かを欲しているなら、こちらから何かを発信する自信はあります。
しばしば若手も交えて外人のアテンドで客先訪問をした事がありました。すると若手は終了後にへとへとになっているのが常です。理由は簡単です。外人が若手に「お前も何か言え」とプレッシャーを掛け続けるのです。座っているだけなら参加した価値がないのですね。ところが、コンサルタントと言われる人でも、打ち合わせ中に「無言の行」を実践される方が少なくありません。私が無言を貫いているときは「あ、この打ち合わせは無駄」か「この打ち合わせに参加する意味が判らない」と言う状況です。つまり旅には出たものの、自分が旅に出た理由が見つからないケースです。例えば「俺、一人だとさ不安だからついてきて」に多いパターンですね。そしてもう一つは、お相手が特に何も求めていないケースです。これ、あるんですよ。理由は書きませんが。そして惰性のような「○○部打ち合わせ」的な社内打ち合わせでしょうか(笑)。

知らないが正義な事は、打ち合わせで言えば本来は「価値が無い」と同義だと思うのです。が、SESで社内打ち合わせのようなものばかりを経験していると、存在意義を示す言葉が「知らない」になってしまうんでしょう。これ、とても不幸だと思うのです。