ネゴから逃げるな!

よく「お客さんと話をしていると活き活きしてますよね」とか言われます。実際、辛い打ち合わせでも生命力…とでも言うのか、やりがいを感じることは多かったように思います。
特にネゴの場面では「わたしさんだから言えるんですよ」と言われる事も何度もありました。本人としては普通に話しているだけなのですがね(笑)。
実際、なぜそう言うのか、そしてそう言われるのかを私流に分析してみましょう。

まず自分ができない事が多い人間だという事を自覚している事が強いんでしょうね(笑)。それだけに、できるか(やれるのか)、それともできないのか。出来るのであれば、いつまでに、どんな内容でできるのかを話します。時に「やりたくない」ことがあると話しながらでも、その理由を探します。その時に浮かび上がる理由から「面倒くさい」は除外しますね(笑)。それ以外の「やる意味が不鮮明」、「やる事で他に悪影響がある」など、相手の方に判って頂けるような理由が有るはずなのです。
では、これをチームや組織として回答する場合です。打ち合わせで俎上に上がる内容は、何かしら事前に検討しているはずです。その時に、打ち合わせの主眼やゴール、リスクなどが含まれていれば、不意に回答を求められても実はそれほどあわてる事はありません。
別の言い方をすれば、その場であわてる原因として「準備不足」、そして準備の不足も含めた「想定」の対象にあると思うのです。
あ、後一つは知識の不足です…これは、私にとって一番辛い(汗)。

他社の方との初同行での顧客訪問で「さっき説明していたあの事例、今度、教えてくださいよ」と言われる事があります。実は付け焼刃で取り寄せていた情報なのですが、恐らく突っ込まれるであろうポイントが判っていれば、付け焼刃でも説明は出来ます。寧ろ練りに練ったような情報でも、その場で浮かばなければ、何も価値は無いのですね。最近の言い方だと「刺さるポイント」って奴でしょうか。
刺さるポイントは人それぞれ違うのですが、重要なことは理解していることを伝えるだけではなく、その相手の立場でなら、どのような利益があるのかもあわせて伝えることだと思います。これがなければ「カタログ持ってきたので、読んでおいてください」と同じです。
そして、刺さりそうなポイントをパワーポイントや資料だけではなく、頭の中にも幾つか用意しておけば余りあわてる事は無いでしょう。

ではネゴです。よくネゴシエーションとコミュニケーションを取り違えている人がいるので、改めて
ネゴシエーション:交渉とは、合意に到達することを目指して討議すること。 wiki - 交渉
コミュニケーション:人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達。 wiki - コミュニケーション

似ているけれど違うのですね。基本、コミュニケーションの上でのネゴシエーションですが、コミュニケーション自体がゴール設定を必要としない「伝達」で済む場合も有るのに対して、ネゴシエーションは「合意に到達する」と言うゴールが設定されます。特にベンダー側の立場で打ち合わせなどに参加する場合、その場をコミュニケーションではなく何らかのネゴシエーションが発生する場として考えなければならないでしょう。

この下敷きの上で会議体に臨もうと思えば、
・主題の確認、討議ポイントの想定
・資料提示の必要性、有為性の想定
・参加者からの問い合わせ想定
が必要です。「顔合わせだけだから、参加して」といわれた打ち合わせほど痛い目にあう事が多いのです。だって準備できていないんですからね。
また、更に長い目線での準備も必要でしょう。例えば、技術的な作業が一番軽いSaaS代理店ビジネスなら
売る
 L 市場調査
   L ニーズ把握
   L 競合把握
     L価格状況調査
 L 機能調査・学習
 L 優位性・劣位性把握
 L 事例学習
 L コラテラル作成
 L デモ作成・構成
 L プレゼン
   L 構成
   L 想定Q&A
 L Webページ構築
   L ベンダー調整
これくらいは最低でも掛かるでしょう。
これに対して、長期目線となると
構築
 L 導入プランニング
   L 必須要員役割リスト
   L 社内外 要員募集計画
   L 社内外 要員募集実施
     L 書類選考
     L 面談
   L プロジェクト実施
     L プロジェクト計画
     L 導入
     L カットオーバー
サポート
   L サポート
     L 自社サポート
     L ベンダーサポート
   L サービスレベル
     L ベンダーサービスレベル調査
     L 他社実施状況調査
     L 要求
      L 原案取りまとめ
      L 要求内容精査
     L SLA策定
と、そして個別個別に文書の取り交わしや契約としての締結が動きます。
しばしば、SES会社が見落としているのが、構築・サポートの範囲です。全く見落としているのではなく、収益としてのソロバンは弾いているのですが、やるべきことが決まっていない事が多いのですね。きつい言い方をすると自分の都合については良く考えているのですが、お客様が気にしている点は見過ごしているのです。「べき論」としては、売るための準備に入ったら、同時に構築・サポートも将来をきちんと見据えて可能なところから「済」とマークできるようにすべきでしょう。

そう、上手くネゴをとるためには、単に経験を積むだけではなく、必要な調査や情報収集、準備をしておく必要がある!って言うことなんです。